リスティング広告の運用代理店で1年間インターンをしたのちスタートアップに参画、Webサービスのマーケティング、グロースハックに携わるようになった著者が感じたスタートアップにおけるマーケターの働き方をご紹介します。

Webマーケターとしての経歴

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僕はもともと、アナグラムという日本有数のリスティング運用代理店で約1年間インターンをしていました。インターンにも関わらず大きな裁量を任せていただいて、大小様々な規模のクライアントに対しリスティング運用戦略の提案から構築、運用、レポーティングまでを一貫して行っていました。検索キーワードの裏側をよんで広告戦略を組み立てる、仮説検証を繰り返して投資効率を上げて行く、自分の働きがクライアントの利益に直結するといった点が非常にエキサイティングで魅力的な仕事です。

またSEOを独学で学び、SEO、リスティング広告、Web制作を駆使して『売上げを上げるためにWebでやれることはなんでもやります!』といった個人事業を始め、脱毛サロンなど中小企業向けにコンサルティングサービスの提供をしていました。

マーケター=プロダクトをマーケットにフィットさせる役割

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そんな僕が紆余曲折を経てdelyというフードデリバリーサービスを提供するスタートアップにジョインすることになりました。

『マーケティングの目的は営業を不要にすること』というドラッカーの句は大変有名ですが、一般にマーケターというと『マーケティング戦略を立案、実行する人』『広告などを通じて新規顧客の開拓を行う人』といったイメージがあるかと思います。

小売業において広告戦略は比較的自由度が高いです。反対にプロダクトは仕入れや生産の都合など制約条件が多く、新規開発や変更は容易なことではありません。そのためWebマーケターとして主に小売事業者をクライアントとして働いていた頃は、基本的には広告戦略を通じた新規流入増加施策の実施が業務の中心となります。稀にLPや商品の改善提案、新商品、新しいビジネスモデルの提案まで行うケースも存在しますがやはり実行まで時間を要します。

一方Webサービス企業においては、エンジニアとデザイナーがいれば瞬く間にプロダクト自体を改善することができてしまいます。このようにプロダクト自体の自由度の高いビジネスを行う現場でマーケターに求められる役割は、従来通りの広告戦略の立案や実行にとどまりません。

マーケターの働き方として、プロダクト自体の改善にも積極的に取り組んでいくべきです。『マーケター=プロダクトをマーケットにフィットさせる役割』と定義すると分かりやすいのではないでしょうか。『フィットさせる』というテーマには、プロダクトを誰にどのように見せるべきかという課題とプロダクトはどうあるべきかという課題が含まれます。Webマーケティングを専門にしてきた僕にとって後者は新しいチャレンジです。

Webマーケティングに詳しいだけでは全く通用しない環境だった

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スタートアップで実際に働くまではただ漠然と、これまでの経歴の延長線上の仕事をするつもりでいました。例えばリスティング広告を通じて新規ユーザーを獲得する、あるいはWebサイトの設計を行ってSEOに強く、またユーザーにとっても使いやすいものとするようにディレクションを行う、などです。

しかし多くの場合、サービスローンチ直後のサービスは、リーンスタートアップよろしく穴の空いたバケツ状態です。『このサービスのやりたいことは分かるし確かに便利だ。でもまだまだ改善すべき点がありすぎるし、大満足とは言いがたい』そんな状況で広告にコストを割くべきでしょうか?僕はNOだと思います。そうであれば、『リスティング運用スキル』という僕の持っていた武器は全く役に立ちません。SEOも同様です。

Webサービス企業における至上命題はプロダクトの改善を繰り返してユーザー満足度を高めることです。Webサービス企業においてマーケティングに関わるのであればWebサービス、そしてその構成要素であるエンジニアリングやデザインへの理解が不可欠だと僕は思います。

経験から学んだスタートアップにおけるマーケターのあるべき姿とは

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マーケターとしてユーザーをセグメントし、ターゲットの課題に合わせた訴求を行うという経験を積んでいたかいがあって、ユーザーの利用シーンを想定しターゲットごとの課題を見つけることができます。ただし、エンジニアリングやデザインへの理解がないと課題に対する有効かつ実現可能なソリューションを描くことができません

もちろん社内の優秀なエンジニアやデザイナーに相談をすれば解決できます。しかし慢性的に開発リソースが不足している中で必要以上のコストをエンジニアやデザイナーに強いることは避けたいというのが本音です。そのため、これまでに培って来たマーケティングのスキルに加え、入社後にプログラミングやデザインを積極的に学び最近では自ら開発にも加わるようにしています。

スタートアップにおいてはやるべきことは山積み、やりたいことは等比数列的に増えて行く一方でリソースは変わらない、あるいは等差数列的にしか増加しません。自分がこれまでに持っていた強みに固執するのではなく、企業の目指すゴール、そして自分の果たすべき役割を明確にし、求められるスキルを積極的に身につけて行く姿勢が、創業期のベンチャー企業、スタートアップでは求められると思います。