freee流グロースハック。月間30本もの施策を行う秘訣とは。

GHJインタビュアー(以下、GHJ):本日はよろしくお願いします。早速ですが、まずはfreee 社の事業と提供するサービスについて教えてください。

轡田 哲郎氏(以下、轡田):スモールビジネスに関わる方々がクリエイティブな仕事にフォーカスできるようにするということをミッションとして、主にバックオフィス業務のクラウドサービスを提供しており、「クラウド会計ソフト freee」、「クラウド給与計算ソフト freee」、「会社設立 freee」の3つのサービスがあります。他にもオウンドメディアなどいくつかのサイトを保有しています。

※参考:会計ソフト freee
鈴木 幸尚氏(以下、鈴木):加えて、10月から始まるマイナンバーに関するサービスも現在立ちあげているところです。

GHJ:複数サービスがあるんですね。その中でみなさんはどのようなお仕事をされているのですか?

グロースハックを専門で行うスペシャリストチーム

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・左からエンジニア轡田氏、エンジニア大平氏、マーケティング鈴木氏

轡田:freee はセールス、マーケティング、開発、サポート、UX…などのいくつかのチームで運営していて、私たちはその中でグロースハックに特化したグロースチームに所属しています。

GHJ:グロースハックに特化したチームですか。みなさんの職種とチームにおける役割を教えて頂けますか?

轡田:エンジニアでグロースチームのリーダーをしています。もちろんエンジニアリングもやるのですが、企画・プランニングから、作って、リリースしたものを分析して…というところまでやっています。

大平 武志氏(以下、大平):エンジニアの大平です。基本的には企画から実装、あとは分析できるようにデータの出しわけなどをメインで担当しています。

鈴木:マーケ側のグロースを担当している鈴木です。もともとマーケティング担当としてAdWords運用などをやっていたので、そういった知見を活かしたグロースをメインでやっています。エンジニアリングはやりませんが、その前段階の企画や、オンラインマーケティングの実装はやることもあります。

轡田:この3名に加えてもう一人、山田というデザイナーもいれた4名でグロースチームです。あとはチーム外でデータマイニングアナリストがいて、施策に必要なレポート出したりしてくれています。

GHJ:自己紹介ありがとうございます。それでは早速グロースチームについて色々聞かせて頂きたいと思います。

GHJ:グロースチームでは主にどのサービスや領域を担当しているのですか?

轡田:グロースチームは、先にお話した「会計freee」、「給与計算freee」、「会社設立freee」の3つのサービスすべてを見ています。お客様とのコミュニケーションや、LPの改善施策まで何でもやります。継続して利用してもらうためにどういう要素が必要か、そのために何をすべきか考えて、実装まで行なっています。

GHJ:特定サービスにフォーカスするのではなく、3つのサービスに横断的に関わっているんですね。

「エジソン」とにかくアウトプットし続け、成果に繋げるチームカルチャー

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GHJ:グロースハックを担当する専門のチームがあるというのは珍しいと思うのですが、チームのミッションとして掲げているものはなんでしょうか。

轡田:チームミッションは、ユーザーにサービスを継続して利用してもらうために、価値を提供し続けることです。それを表すキーワードとして「エジソン」というものがあります。エジソンは大発明もしていますが、その発明に至る過程で数多くの失敗もしているのは有名ですよね。彼は失敗を失敗と思っていなくて、「うまくいかなかったことを発明した」と言っているんです。

グロースの中でもうまくいかないこともありますが、たくさんの施策をうって、学習しながら、やれることはスピード感をもってどんどんやっていく。そこから学習したことを活かしてさらに施策をうって、成果につなげていく。とにかくアウトプットしていくチームでありたいという思いから、それを言い表すキャッチーフレーズとして、「エジソン」を掲げています。

GHJ:面白いですね。このフレーズはどうやって決まったんですか?

轡田:チーム作りをするときに、メンバーで半日会議室にこもって、互いを知るために個人的な話もしたりしながら議論しました。そのなかでスピード感や、失敗から学んで改善していく、そういったチームであることを大事にしたいという声が多く出て、そこで鈴木が「それならエジソンですね」と。彼はマーケティングの天才なので、キャッチコピー考えるの得意なんです(笑)。

鈴木:「エジソン」一択でしたね。

GHJ:そうなんですね、さすがです(笑)。

状況に応じてチーム体制を変えていく柔軟性

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GHJ:グロースチームが発足するに至った経緯や、今のメンバー構成の理由などについてお聞きしてもいいでしょうか。

轡田:1 年ちょっと前くらいからグロース専門のチームとしてやっています。もともと数字をみてどれくらいのユーザーが継続利用しているのか、有料ユーザーになっているのかなどを追えていなかったので、そこを追っていくチームを作って仕組みを整えていった方がいいということで立ちあげられました。

最初はセールス担当なども含めた5,6名のチームだったのですが、ちょっとずつ変わってきました。メンバー編成にエンジニア以外のマーケやデザイナーも入ってるのは、作るだけでなくデザイン・マーケティングの部分からもサービスを全体最適していく、というところもありますし、このチームだったら何でも出来る、ということもあります。デザイン、UI/UX、開発、それを広めていく、というところまで一貫してできるチーム編成ですね。

GHJ:チームメンバーや構成が変わっていったきっかけは何だったのですか?

轡田:これといったきっかけというよりは、必要なときに必要なメンバーでやれるようにしていった結果ですね。必要なときに、適宜巻き込んでいく、というかたちでプロジェクト毎にメンバーをアサインしたりもします。

GHJ:そうなんですね。皆さんはグロースチーム専任なんですか?それとも他の業務も行なっているのですか?

轡田:私と大平はグロース専任でやっています。 鈴木と山田は他チームと兼任してますね。

GHJ:チームを兼任するのってバランス保つのとか難しそうですね。マーケチームとグロースチームでの住み分けってどのように線引しているのでしょうか。

轡田:サービスプロダクト内をメインで考えるのがグロースチーム。プロダクト外を担当するのがマーケチームという分け方ですね。ただ、マーケは、プロダクト内にももちろん絡んでくるので、はっきりとした線引きはしてないですね。

GHJ:なるほど、ありがとうございます。

月間30本の施策をまわす高速PDCAとは

GHJ:さて、チームミッションやチーム運営の変遷について聞いてきましたが、実際の業務の進め方について教えて頂けますか?

轡田:毎月1回、施策の案出し会議をします。ブレストみたいな感じで。そのなかでフォーカスしていくエリアを決めて、プロジェクトごとにリーダー(プロジェクトオーナー)を決めて、そのオーナーが施策の優先順位を決めて、進めています。

GHJ:そうなんですね。施策の案だしはどのように行なっているのですか?

轡田:他サービス事例をヒントとすることもありますが、本質は「課題解決」ですね。データをみたり、アンケートをみたり、サポートへの問い合わせ内容をみたり、ユーザーテストを実施したりしてユーザーの抱えている課題を把握して、そこからソリューション(施策)を考えています。

BtoBの会計ソフトって、選ぶときに皆吟味するからハードルが高いんです。だから単にクリック率とかを考えるだけでなく、何が課題で、どうやったらそれを解決できるのかを見つけ出すのがとても大事なんですよね。

GHJ:なるほど。月にどのくらいの施策を行なっているのですか?

轡田:細かいA/Bテストなども含めると月30本くらいの施策を行なっています。

GHJ:30本もですか!すごいですね。では常にいくつもの施策を動かしているのですか?

轡田:エンジニアが2人なので同時に動かしているのは2つくらいですね。

GHJ:並行して施策を行うと2つのKPIがバッティングしてしまうこととかないんですか?

轡田:施策の順番はかなり気をつけてますね。優先順位付けをする段階で同時に比較できないものは外すようにしています。

GHJ:優先順位付けはどうやっているのですか?

轡田:インパクトの大きいそうなところからですね。週次で施策対象を切り替えたりしてます。

GHJ:KPIとしては何を見ているのでしょうか。

轡田:KPIとしてはユーザー数と継続率が大きな2つですね。当社サービスの場合は、ユーザーも法人の方と個人事業主の方ではニーズが違うのでそこでも分けています。その他にも
データ入力率とかそういったところも見ています。

GHJ:施策をみる期間はどのくらいなんですか?

轡田:長くても1週間くらいですね。短いものだと2日くらい。統計的な有意さを求めるとサンプル数は多い方がいいのはもちろんなんですが、それだと短期間で改善できないので、(サンプル数の多さによる)厳密さよりもスピード感を重視していて、6割でもいいから出そうということを大事にしています。

裁量権の大きさがスピードに、そして成果に繋がる

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GHJ:とにかくスピード感をもって取り組むと。施策の進捗管理はどのように行なっているのですか?

轡田: 少人数のチームということもあってフレキシブルにやってます。Googleのスプレッドシートにバーっと施策を出して、優先順位やリリース日などをメモしてやっています。細かい進捗確認は毎日の朝会で確認していますね。実際に作るもので言うと半日から1日でやるものが多いですね。

GHJ:施策を行う決定権はチームにあるんですか?なかには会社の承認が必要なものもあるかと思いますが。

轡田:はい、チームに権限があるので、会社の承認がなくてもどんどん進められます。これくらいしないと普通じゃないスピードで改善していくのは無理ですね(笑)。

鈴木:最初はお伺いを立てていたのですが、それじゃ全然進まなくてダメだと。それこそチームができたばかりの時はサインアップフローの変更に数ヶ月もかかって。面白いのは、綿密に考えた案だったとしても結果が必ずしも良くなるとは限らないということですね。逆に、ラフにやった方が結果が良かったです。このままじゃダメだから、とにかく小さい施策でもいいからスピードもって繰り替えて改善していこう、となっていった感じです。

柔軟なチーム体制による他部署との関わり

GHJ:先ほどグロースチームとマーケチームの住み分けの話がありましたが、実行する施策がチーム外からくることはあるんですか?

轡田:それはありますね。サポートチームから「最近こういう問い合わせ多いんだけど…」とか、セールスチームから「こういう数字が欲しいんだけど」とか。

GHJ:そういう場合どう対応しているのですか? 既に進めている施策との兼ね合いもあると思いますが。

轡田:費用対効果を考えてグロースチームで優先順位を付けて対応します。もともとスケジュールをガチガチに固定していないので、インパクトが大きそうなものが突然入ってきたらそっちを優先して対応することもありますし。そこらへんはかなり柔軟に対応していると思います。

失敗をどう次に活かすのか。諦めないことが成功につながる。

GHJ:なるほど、ありがとうございます。施策について事例を教えて頂けますか?失敗したもの、上手くいったものの両方教えて頂けると。

鈴木:先ほどの数ヶ月に及ぶサインアップフロー変更プロジェクトが1つ。あとは2年間ずっと変わらなかった初期登録画面でのA/Bテストですかね。全然違う20画面くらい試しましたね。やっていく上でいろんな知見が貯まり、改善するまで諦めずにやり続けてようやく改善できました。

上手くいかなかった事例で共通していたことでいうと、「なんかダサいから変えよう」みたいな感じでコンセプトがふわふわしている場合でしょうか。こういうケースはダメだった時も何かダメだったかの学びが少ないですね。逆にコンセプトが明確な場合は、仮に失敗しても次に活かせることが多いです。

轡田:うまくいった事例でいうと、サインアップフローの改善でしょうか。「自動で経理」という機能があり当初はそれを推していたのですが、サービスが成長するにつれて、またユーザーが増えるにつれて、それ以外の機能も充実してきたので、思い切ってその機能を推しすぎないようにしたら離脱率が下がったり、いろんな数字が改善しました。

GHJ:なるほど、強みとして推しだしていたところを思い切って変えるって勇気が要りますね。

※GHJ注)
その他にも色々なグロース事例について話してくれました。それらの事例については別サイトの「継続的なグロースハック「クラウド会計ソフトfreee」のユーザビリティ改善事例 | freee 株式会社」で紹介しております。

最後に

GHJ:色々お話頂きありがとうございます。最後に改めて、freee のグロースチームが大切にしていること、読者の皆さんに伝えたいことについて教えて下さい。

轡田:そうですね…グロースハックを行なっていく上で、というかグロースハックに限ったことでは無いと思いますが、「ユーザーにとってマジで価値あるか」をとことん突き詰めることが大切だと思います。グロースハックというのは本質的にはユーザーの課題解決だと思うので。あとはエジソンのようにあきらめない心と好奇心旺盛であることと。これらをもってやり続ければ伸びていくんじゃないかなと思います。
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まとめ

今回はfreee 社のグロースチームに、グロースハックの考え方やチーム発足の経緯、チーム運営の仕方についてインタビューさせて頂きました。インタビューのなかでいくつも事例が出てきたりと(残念ながらここではご紹介できないものもけっこうありました。)、本当に裁量権とスピード感をもって施策を行なっていることに驚かされました。チーム作りやプロジェクトの進め方など、読者のみなさんがグロースハックを行なっていく上でヒントになるものがあるのではないでしょうか。

クックパッド加藤氏インタビュー「すでにあるものや仕組みを大きくすることだけが、グロースハックの全てではない」

グロースハックの考え方をクックパッドグループの様々な領域に取り入れる

片山:本日はお忙しい中ありがとうございます。早速、取材の方を始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。まず、加藤さんの現在のお仕事やご担当をお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか。

加藤:今は広告領域を担当してるんですよ。新規広告開発部という部署を新設してそこで広告の新しい商品を作ったり、すでにある商品については配信の最適化を進めていけるような技術的基盤を作っています。広告商品の新規開発と、配信基盤の改善をひたすら繰り広げてるという感じですね。
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片山:じゃあグロースハック関連の施策は今はやっていらっしゃらないんですね。

加藤:(クックパッドのサービスそのものや、「有料会員を伸ばしていく」という観点では)ほとんどやっていないですが、広告の領域にその考え方を持ち込めないか、ということは常に模索して進めています。単純なA/Bテストを正しいやり方で高速化させていくことはもちろんですが、広告商品そのものの設計の仕方から改善の流れまでですね。加えて、クックパッドには今、おでかけプランの作成・共有サービス「Holiday」や、親子で楽しめる知育アプリの「なりきり!!ごっこランド」などグループ会社が提供しているサービスもありますので、そういったサービスを伸ばすにはどうしたらよいか?といった話を各チームとディスカッションしたり、アドバイスさせてもらうことはあります。

人に聞くことで知見を蓄える、業界の流れを知る

片山:では本日のインタビューテーマからいうと、その会員を伸ばしていたところの時期の話にフォーカスしてインタビューさせていただけたらと思います。元々加藤さんがグロースハックを実施していくことになった経緯からお伺いしてもいいでしょうか。

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加藤:僕が担当させてもらうことになる前から、会員事業そのものは存在していましたし、会員事業部というものもありました。しかし、当時は部署のほぼ全員がサービス開発に集中していて、マーケティングの担当がいなかったんです。当時僕は経営企画領域の担当だったのですが、ファシリテーションを担当していた経営会議の中でも、役員同士の間で「もうちょっと改善できるんじゃないか?」という議論が出ていて、それなら「事業経験もなければこの領域における知見もないですけど、このまま何もやらないより学びながらやってみたら可能性も広がるかもしれないので僕に兼務させてください。」と言って、少人数のマーケティングチームを作ってリーダーをやらせてもらうことにしました。

そのチームで、例えばUI変更とかABテストといった細かい施策であったり、友人招待やギフト、無料クーポンの導入検討など、いろいろな企画の模索をやり始めたんです。そうした取り組みのほとんどは失敗に終わったのですが、中には当たる施策も出てきて、数字もついてくるようになりました。その流れを受けたのと、ちょうどこのタイミングで役員体制が大きく変わったのもあり、マーケティング領域を切り出した部署を新設して部長に就任させてもらいました。

片山:具体的に部署化してからどういったことをやっていらっしゃったのでしょうか。

加藤:まず、先ほども申し上げたとおり、僕自身が当時はこの領域については素人だったので、その業界で実際に会員を伸ばされている方数十名に、とにかく会いに行ってお話を伺いました。あとは、Facebookさんなどユーザーを大量に伸ばしているようなチームのご担当者に話を聞きました。聞いていく中で、お金を払って広告を出稿して会員を伸ばしていくという方法もあるのだろうけど、我々の今のフェーズでは、まずはお金をかけずに改善レベルで伸ばせることとか、仕組みを変えて伸ばすところをやろうかなということになりました。そこでメンバーを一旦そこへ全部集中させて実施していきました。

片山:最初の聞きにいくのが結構大事なステップだったのですかね。

加藤:そうですね。今期から新しく広告領域を担当しているのですが、新しい領域の担当になったら、まず一通り座学で知識をつけて業界の歴史を学びながらその移ろいを大きく掴み、次にその領域の一番すごい人、現時点で業界を俯瞰してその流れを正しく話せそうな人にとにかく話を聞きに行きまくるというのがやっぱりいいかなと考えています。20人とか会いに行くと大体同じことを言っている部分と、この人だけ特殊なこと、別のこと言っているというのがわかってくる。みんながみんなほぼ同じことを言っていたらこれは流れとして確かなのだろうとか、別のこと言っている領域は1つ1つ自分たちのサービスの場合はどうなのか考える、そういう風に業界の流れを大きく掴んでいく感じです。

片山:それで言えば、私はまさに今聞きにきているのかもしれないのですが(笑)

「利用者が利用者を呼び、サービスそのものが自然と伸びていく仕組みを設計し、それを育てていく」

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片山:最初は有料会員を増やす取り組みだったと思うのですが、(「グロースハッカー」日経BP社 をご監修されているのを含めて、)グロースハックの言葉や概念に着眼し始めたのはいつくらいなのでしょうか。

加藤:やりはじめた当初は、言葉自体に着眼するということはほとんどなかったです。

片山:どちらかっていうと本を書くぞと決まってからになるのですかね。

加藤:そうですね。やっていたことがたまたま合っていたというか、その依頼が来た時に初めてその言葉が生まれた背景や歴史について体系的に調べ直しました。なので、そんなに最初からグロースハックに詳しいわけでもなければ、グロースハッカーと自分を呼称したこともなかったですね。
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片山:加藤さんの中ではグロースハックに対するイメージや特徴をどう捉えていらっしゃいますか?

加藤:「利用者が利用者を呼び、サービスそのものが自然と伸びていく仕組みを設計し、それを育てていく」ということが重要ですので、サービスの開発段階から伸ばすところまで、息の長いプロジェクトを推進していくという観点でプロジェクトマネージメント性が高いなと思います。すでに作ってあるものや仕組みを売ったり大きくすることは、グロースハックの重要な要素ですが全部ではないと思うんですよね。サービスそのものに伸びる仕組みを入れ込んでいき、かつ伸びる仕組みをちゃんと伸ばせるように、色々な方法を使って伸ばすというところまで実際に全て含めているものなので、かなり幅広い概念だなという感覚があります。

片山:もっと(サービス全体を俯瞰して)包括的に設計していくことが大事ということなのでしょうね。

加藤:そうですね。なんとなく(グロースハックという言葉に対して、)一部の側面にしぼって話がなされている、そんな気がします。

A/Bテストはあくまでグロースハックの一側面にすぎない

片山:クックパッドをグロースさせる時にも施策全体を設計してから1つ1つ試していくみたいな手法だったのでしょうか。

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加藤:クックパッドの場合は、そもそも僕がクックパッドそのものやプレミアムサービスのグロースハックのすべての領域を担当していたわけではありません。先ほどの話ともつながりますが、ぼくはすでにあるよい仕組みを伸ばすという、グロースハックのうちのごく一部の領域を担ったにすぎません。クックパッドには「つくれぽ」という仕組みがあります。レシピが投稿されると、その投稿レシピを検索して実際に料理をした人が、写真付きで感想を送るというものです。しかも、その一連の流れが他のユーザーにも見えるようになっているので、閲覧者が「みんなが作って美味しいと言っているレシピは、きっと美味しいだろう」と推測するようになる。ですので、みんなに人気のレシピを見たくなるという構造ができていました。

それで、人気順検索を始め、ほしいレシピが簡単に見つかる様々なサービスを用意して、その提供を有料化しています。この仕組みをどうやって伸ばすかということで、枝葉(的な位置づけの施策)として、売り方を考える領域をやっていったという感じですね。例えば招待の仕組みを入れ込む、その時にその招待機能で新しいユーザーを呼んでもらえるように(招待したユーザーを)7日間無料にする、ユーザーの属性別におすすめする有料機能を最適化する仕組みを導入するとか、そういった細かい施策を色々一通り試して全部やりました。(新規ユーザー向けの)クーポンを作るとかギフトパックを作るとかも含めて。

この上で入れ込んだ仕組みを今度どうやって、改善して伸ばしていくのかということで表層面のABテスト、LPの改善とか文言変えるなどの施策がある。僕はつくれぽや人気順検索といった、グロースさせるためのエンジンのようなものを作るというコアの領域を設計し、それを伸ばす仕組みをサービスに入れ込みながら、日々改善を繰り返していける体制作りをして伸ばしていく一連の継続的活動こそが本当の意味でグロースハックだと考えています。

片山:例えばA/Bテストはあくまで枝葉であって、サービス設計やユーザーを増やす仕組みを作るっていうのが根底にあってということですよね。

加藤:はい。ユーザーがユーザーを呼ぶような雰囲気を作るっていう。それをサービスの設計に入れ込むという点が本質のうちの一つだと考えています。

評価指標はサービスが目指す世界によって変わってもいい

片山:そのグロースハックをやっていくぞという中で、前回の座談会企画ではKPIとかKGIとか数字の設計とか考え方の話題があったのですが、その当時など加藤さんはどうやられていたのかと、そういった指標設計の考え方として大切なことがあるのでしょうか。

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加藤: KPIは大事ですけど、特別こうしなくてはいけないというこだわりは無いですね。ただ、あんまり複雑なものにしていないことでしょうかね。会員事業を担当していた時、僕はプレミアム会員事業を伸ばしながら、第2の有料会員事業として「プロのレシピ」という、雑誌や書籍に載っているような料理家やシェフのレシピが見放題になるサービスを新しく開発していました。プレミアムサービスに関しては、結局登録率をどれだけ挙げられるかというのが有料会員の純増数を増やす上でのポイントだったので、コンバージョンレート、登録率を見ていました。あとはLTV、顧客生涯価値を高める、という観点で退会率ですね。とりわけ登録後3ヶ月以内退会率を重視していました。

プロのレシピの方は日常使いする道具性の高いクックパッドと異なり、雑誌をみるように眺め続けていたいと思えるようなサービスにしたいという思いが強かったため、多くのユーザーが夢中になってたくさん回遊しているサービスということを考えると単純にPVだよねということでPVにしていました。

片山:最終的にどれくらいの成果だったのか伺ってもよろしいでしょうか。

加藤:施策の時期も広告出稿をしていた時期もA/Bテストもあるので、一概には当然言えませんが、最終的にプレミアムサービスの年間会員純増ペースは在任期間中でおよそ2倍になりました。プレミアムサービスは2004年より開始していましたが、担当を開始した2012年1月時点ではおよそ70万人だった会員数は、在任終了時点での2014年末で150万人を超えました。

プロのレシピは在任期間中には目標を達成できませんでしたが、その後のチームの頑張りが功を奏し、リリースしてから半年後には当初設定していた目標PVを達成することができました。(この時はコンバージョンレート、退会率、PVといった指標でしたが、)そういう評価指標はサービスが目指す世界によって変わってもいいし、同じサービスであってもそのフェーズによって変わっていき得るものだと思います。

片山:わかりやすく柔軟にという方針が良いですね。

チームメンバーや社外への成功事例共有

そういった施策実施やKPI策定もそうですけど、意思決定は加藤さんがやっていたのでしょうか。それともチームで話し合っていたのでしょうか。

加藤:領域設定、ビジネルモデル、目標、KPIといった基本的な事業上の設計は、だいたい自分で決めるかプロジェクトリーダーと2人で決めていました。サービスの骨格づくりや内容、どんな課題をどう解決していくか、といったサービスの領域についてはチームメンバーとディスカッションや試行錯誤を重ねながら一緒に考えて動いていく、という感じでしたね。ただこれはその人の得意不得意、自分なりの好みなどによってまちまちなんだと思います。

片山:チームにどういう人が望ましいとかそういったことはございますか。
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加藤:そうですね、自分で目標を設定して、愚直にそこに向かってPDCAを回せるエンジニアはいいですよね。あとはもうちょっと、幅広い視野を持って事例をちゃんと集められる人ですね。どの仕事も一緒でしょうけど、まねることが結構重要だと考えていて、世の中にある色んな会社が例えばグロースハックのブログとか書いている、あれを一通り調べてみると、同じこと言っていると言うのが結構あるので、そういうことを当たり前にやるような人がいいですね。「守・破・離」じゃないですけど、それをまねて、通用するか確認して、合うか合わないかを見極めて、今度はそれを応用させたりくっつけたりしながら、新しい取り組みをするという一連の流れができることは大事だと思います。で、その過程でたどり着いたオリジナルなアイデアをどんどん試していき、成功したものは業界標準化できるように社内外問わずどんどん共有しながら広めていく。

例えばリサーチをして業界の事例を掴むという観点では、1年半前くらいに社内向けにグロースハックというか、A/Bテストの事例集を作って社内に共有したりしていました。成功事例の共有については、slideshareで当時の知見を余すことなく公開しました。(筆者注:リンク先の資料は2013年当時のものです。)

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(筆者注:実際は100ページ!を超える資料で写真はその表紙。中身をざっと拝見しましたがとても興味深かったので是非どこかでみなさんにも公k(ry )

片山:おお!チームでこういうのを作られたんですか!?(感動)

加藤:・・・土日に一人で作りました。(笑)こういうものを作って、「何をしたらどう伸びたか」を全部同じフォーマットでブログをかき集めて、とにかく数集めて全体傾向つかんで、それを一人でため込まないでどんどんチームに共有するということをやりました。

加藤:これをやっていると、「入力フォームはやはりシンプルにした方がいいんだね」とか、「あのボタンの文言ってこうすればいいんだ」とかわかってくるんです。それを繰り返して(さっきのヒアリングの話し同様に)皆が伸びたと言っているものはやっていました。

日本におけるグロースハック事例はまだまだ少ない

片山:事例を調べていることや聞きに行ったことで、これ見ているぞって言うメディアありますか。

加藤:特にこれ、といった決まったものはないですね。検索で一通り上から本当に片っ端からチェックしました。グロースハックは日本ではまだまだ書籍が少ないですし。

片山:そのうち1冊はそもそもご監修ですしね。(笑)

片山:最近のグロースハック事例で気になっていることやお考えになられたことはございますか。

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加藤:作ったものを伸ばす領域でいうと、テレビCMの活用方法とそのタイミングですね。数年前はゲーム以外のウェブサービスはネット広告が主流でテレビCMを打つ事例ってあまりなかったと思うんですが、近年テレビCMも含めてコスト を合わせながら獲得を伸ばす事例が増えてきている。サービス単体で考えるとお金をかけても獲得効率が悪い時期、大きくかけることで効率が上がってくる時期などいろいろある。そこにサービス単体で最適なタイミングだけを考えるわけにはいかない業界動向、主に競合サービスを見据えた上でどこで攻めるべきか、といった変数の大きい領域に対して、テレビCMも含めた全体戦略がある。

各社それに対してどう考え、どのタイミングでどういう手を打っているか、は興味深いです。また、手段という観点でも配信の時期や素材を細かく調整して見るっていうのはネット企業の真骨頂だと思いますし、この観点でも興味があります。

片山:ソーシャルリスニングが中間指標になっているとかもありますね。他に最近注目している企業やサービスはありますか。

加藤:うーん、今後が気になるっていうのはUberさんとかNewsPicksさんとかですね。Uberさんのサービスタイアップのキャンペーンの数字とか割引のやり方は関心がありますね。実際どういう結果で、どういう評価をしているんだろう、とか。ユーザーとして使っていても、いろいろと模索している感じが見受けられて興味深いです。

片山:Uberさんはまさに前回記事にて取材させていただき興味深かったですし、今後の成長に私も関心があります。

組織やプロジェクト課題の本質を捉えて解決することで、目指す世界を実現していく

片山:もう質問は最後なのですが、加藤さんの今後のミッションや個人的な目標ってお伺いしてもいいですか。

加藤:個人としてこうしたい、というのは具体的にはないのですが、常に自分がいる組織やプロジェクトのボトルネックとなっているポイントの本質を捉えて解決することで、目指す世界を実現していくことに貢献することをやり続けていきたいと思っています。

今は、クックパッドグループが目指している世界に共感していますし、実現に向けて自分の部署や立場にあまり捉われすぎることなく、幅広く貢献していきたいと考えています。そのためには、僕も含め30歳前後のメンバーがもっとマネジメント能力や経営力を鍛えていかなければと思っています。マネージャーというのは自分が知らない領域に入った時も、限られた時間、組織、予算の中で素早く状況を整理し、正しい意思決定ができなければいけないですし、それができなければ失格です。

僕の場合はその領域にこだわりはあまりなく、それこそ事業担当ではない、例えば人事や管理といったバックオフィス領域でもいいかもしれません。その時、その組織にとってここが重要で、ここが伸びればグループ全体が飛躍的によくなっていく!と思えるような領域で常に勝負していけたらなと思っています。

片山:ありがとうございます。加藤さんはお話していて非常に謙虚な方でいらっしゃるのですが、このグロースハックという領域の成功者の1人であると思います。このグロースハックジャパンの記事を見ている読者へアドバイスのメッセージをしていただきたいのですが、いかがでしょうか。
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加藤:やらないといけないことはとてもシンプルだと思います。まずはユーザーを見ること。どういう課題があって、それに対してどういう価値を提供すればよいのか。その中で他の人にも勧めたくなるような設計をどう作ればいいのか、という基本に集中して考える。次に、その仕組みが作れたら、それをどうやって効率よく伸ばせばよいかを考える。その方法としては、月並みですが今世の中にある全ての事例を自分が集められる範囲で一気に集めて分析をして、まずは良いと思うことを愚直にやり続けてみることですかね。進みながら学び、生かすことで自分たちのやり方を確立していく。繰り返しになりますが、「守・破・離」です。

そして、マネージャーは、チームのメンバーがそれに集中できなくなるような障壁をとことん取り除いてあげる。地味・派手関係なく、効果があるかないかだけの軸で判断して、ベーシックな話なのかもしませんが、頭でわかっている話をどれだけ愚直にやれるかということが大事だと思います。

それとそもそもの話として、世の中の大部分のサービスはABテストをやって・・・という段階にないので、そのサービスのコアを固めていくべきです。クックパッドで言えば「つくれぽ」という仕組みがあって、ユーザーが伸びる仕組みの上で、各種施策があります。ありがたいことに、サービスのグロースハックについて相談をいただく機会が増えましたが、テクニック的な話よりもまず価値を磨き込む方が先で、そっちに注力したらいいという話になることが多い。リーンスタートアップに載っているような仮説検証を愚直にやる方が大事です。ですので、大体こういう話になると、僕は最終的にもっと(サービスそのものの)源流に戻ったことを指摘することが多いですね。・・・こんな地味な話でいいのでしょうか。(笑)

片山:とんでもないです。基本に戻ることも勉強になります。

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【著者からインタビューを終えて】
記事としてテキストに落としたときには伝えきれないかもしれませんし、うまく形容できていないかもしれませんが、発想やお考えが柔軟なだけでなく、目的やゴールに対してとてもシンプルな考え方をしている感じを受けたことが特に印象に残りました。インプットに対しても愚直にやっていらっしゃることも勉強になりました。私も「グロースハック」はマーケティングやプロジェクト・マネジメントと併さるような、非常に包括的な意味を含む概念だと考えていたので、改めてそれを再整理していく良い機会にもなりました。

WEBサービスの現場最前線で活躍する人達のグロースハック座談会(後編)

<第1回 グロースハック座談会@電通オフィス>
【スピーカー】
・UberJapan株式会社 北尾恵子 氏
・株式会社つみき 松山岳史 氏
・株式会社ディー・エヌ・エー 山口恭平 氏
・株式会社モバイルファクトリー 松本祐輔 氏
【インタビュアー】
・株式会社電通 片山智弘

日々の施策や業務における課題感

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片山:(前編を経て)ありがとうございます。ここからは後半戦ということで、みなさん個人にもっとフォーカスしてインタビューを続けさせていただきます。皆さん日々そういった役割と施策実施の中で大忙しだと思うのですが、今苦労していることや、過去も含めて大変だったことのエピソードがございましたら教えてください。

山口:そうですね、ゲーム運営って、先が見えないというか、想像しきれないことが多いですよね。成果指標についても、どこまで施策の成果が出たらすごく良いのかとか、今うまくいっているのかいっていないのかっていうのが見にくいと言うか。。。あと非常に先のことを考えた際に、何がクリティカルな課題なのかわかりづらく、そういう場合に盲目的に目の前に見えている課題だと思われるものをとりあえず直していこうみたいな話になりがちです。そういう壁にぶつかると、全体の歩みが遅くなったり、焦って違う方向に進んでしまうことがあります。

片山:確かに定量では効果が測りきれない部分がありますからね。なおさら(前編で紹介したような)ユーザーに寄り添ってゆく定性的な改善施策になると長期的にどうしようっていうのがあるからバランスとるのが大変になりますよね。

山口:定性的に見て必要な事は、ちゃんとやった方がいいと思っています。でも、その成果が具体的にわからないとお金を投資しにくいですよね。例えばTwitterアカウントでみんなにフォローしてもらうためのプロモーションに○百万円かかるとして、 (効果が) 見合っているのかわかりませんが○百万円くださいとはいえないじゃないですか。全社的に測りにくい効果もある一定は大事だよねという意識は持っているので、意思決定が難しいですね。投資対効果がわかりにくく、1,000万だったらいいのか500万円だったらいいのか50万だったらいいのかわからない。

片山:それは難しいですね。組織としてもそういう定性的な投資をどう評価して重要なものとして認識していくのかの意思決定は大切なのかもしれません。皆さんはいかがですか。

松本:皆さんもそうなのかもしれませんが、少ないリソースの中で、チームとして、新機能を追加するか、既存機能のKPIとなっている数字の改善するかの判断に苦労しますね。改善施策は実際にやってみないと効果が分からないので、やってみたら失敗だった、ということもあります。新機能より改善を優先させて失敗が続いたときに、もう細かな改善はやめて新機能に注力しよう、と施策の方向が目先の失敗でブレてしまうのがちょっと怖いなと思っています今は自分の感覚値で、これは絶対いけると思ったことをやってみて、今まで色々やってきた中でも1回くらいしか結果が出なかったことがないので、今は口が出しやすいのですが、その精度がわからなくなったときは悩ましいですね。

松山:今の苦労ではないのですが、今後ユーザー数を増やしていきたいと考えているのですが、どこかで今まで取れていなかったユーザー層も獲得しに行こうと言う話になると思います。そうしたときにその取れていなかったユーザー層に、先程の松本さんの話のように新機能やサービス改善を合わせていくことが必要になると思うのですが、その時にサービス提供価値がぶれたり変わってきてしまわないかを危惧しています。そうなると既存の今現在使っているユーザー層がどう思うのだろうかとか、何を指標にしていいのだろうかとか、どれを正しいと置くかとか、その判断の壁には今後ぶちあたるようになるだろうなと思っています。

片山:それは興味深いですね。私達の広告代理店の業務の中でも、例えばクライアントのソーシャルゲームがある一定のユーザーを獲得した後にテレビCMを中心にマスに出稿してさらにこれまで取れなかった層にも訴求して認知させて新規流入をあげようというのが1つトレンドになっているのですが、根本のコンセプトは大事にしつつも、UXや訴求コピーを(新規ユーザー層向けへ)変えていくときに既存ユーザーからネガティブな意見が発生するということが時々ありますね。どちらにしてもサービスが成長していく中で通る道ですし、ダウンロード数やターゲットユーザーの獲得に関しては基本的に目に見えて結果が出るので、継続されるのですが、本当の意味で万人受けするのは難しいので、その課題はあると思います。北尾さんはいかがですか?

北尾:そうですね、私の場合はアナログなのですけどやはり時間との戦いで。(笑) 私1人でやっているので、やりたい施策を全部はやりきれてない感があると思います。もっとユーザーを増やしたり、特定地域の人へのアプローチだったり、また、ユースケースを増やすなど実施したいと思っています。サービスを使用してくれる可能性のある人達がいるはずなのに全然リーチできていないというのが一番の課題です。

山口:確かに(リーチが)届いていないユーザーに届けることは難しくて、三国志も基本的にユーザーごとに興味関心が異なっていると思っています。『三国志ロワイヤル』は硬派に作っているので、たとえば三国志は知っているけど、三国志演義を読んでいないユーザーには細かい部分は伝わりにくいと思っています。そのままで提供しても良さが伝わらない、と。じゃあ、みんな三国志に詳しくなってもらおうという夢プランがあります。

まだできてないんですが、雑誌の『LEON』でイケてるひげおやじみたいな特集組んでもらって、「イケてるひげは三国志ひげです。」って。その特集をNEWS ZEROで櫻井翔君に取り上げてもらって、嵐ファンの女性が「ああ三国志のひげってイケてるんだ!」って思うとします。そして、三国志ファンの男性がまた同じNEWS ZEROで桐谷美玲さんが「いま巷では三国志が好きな女性が増え始めているようですね。三国志に詳しい人って知的で素敵だと思います。」って言っているのを見て、さらに三国志が盛り上がるといったブームを作れないかなぁと思っています。

そういうことをやっていかないと、より多くのユーザーには届かない。ゲームといまの三国志市場からだと、やっぱりユーザーが限られちゃうんじゃないかなと。それなら、そもそもファン作りをしていく必要があるなって。それが『三国志ロワイヤル』だと三国志ファンなんです。

片山:そうですね。ユーザーリテラシーにおけるキャズムを超えていくことへの達成は難しいかもしれません。皆さんありがとうございます。それでは今度は逆にやりがいとか楽しいことを聞いてもいいですか。

ユーザーのリアルな声がモチベーションに繋がる

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山口:未知の価値にDeNAは挑戦しているなっていう実感がいいですね。PDCAをいかにに速くするのかは当たり前だけど、それだけじゃなくて新しい領域にも突っ込んでいく感っていうのを、今ほんとにゲーム部署に加えて、色んな部署で大事にしています。

松本:そうですね、TwitterとかSNSが普及、使えるようになってきてユーザーの反応がすぐ見れることですね。新しい機能とか施策を出した時に、良い反応・悪い反応がすぐ入ってきて楽しいです。弊社だと社内のコミュニケーションにチャットツールを使っていて、そこにTwitterの発言とかを常に流し続けています。もちろん事前に発見できた方がいいのですけど、そこから新しい不具合を発見したりとか、ユーザーの不満も拾って、ユーザーとコミュニケーションが出来たりすると結構楽しいなと思いますね。

松山:今サービスが伸び始めているので、そこが楽しいですね。毎日数字をみて、「おお伸びてる!」みたいな。あとは松本さんと同じようにTwitterの反応を見ています。僕もFilmarksのツイートですね、アプリとかサービスから定型的にツイートする分があるんですけど、それを除いたユーザーのツイートを常に見るようにしています。それこそ1時間に1回くらいみていて、反応を見て「結構いいな!」とかつぶやいてくれたらうれしいですし、ネガティブなところもそれで改善につながりますし、そういうのが見るのがすごく楽しいですね。

北尾:私はカスタマーサポートもやっているので、やっぱりお客さんの反応が最終的にはすごく嬉しいかな。例えばお客さんがUberでプロポーズしているのを教えてもらえるとそれもうれしいですし、2月14日に昨年はバラの花束を強制的にユーザー搭乗者全員もらってもらったのですけど、それを全世界の都市でやって、デートの前に花をもらってうれしかったとか声をもらったり、そういうお客さんの反応が直接感じられるのが一番うれしいですね。

あとは他にも色々エキサイティングなこと、例えばいつもの車の配車とかじゃなくて、アイスクリームを配ったりとか、クリスマスオンデマンドをして、その結果子どもたちにプレゼントしたりとか、そういう面白い施策が一杯できるのも楽しいですね。co-marketingをさせていただく様々な会社様や、その中で出会う方も、すごい面白い人ばっかりなので、そういう意味では本当に暇なことがないというか。毎日非常に楽しいですね。

山口:ユーザーに褒められるとうれしいですよね。僕も「神運営」とかって言われて、喜んだことがあります。

片山:確かにそれ言われたらうれしいですね。

山口:で、次の日に別の機能をリリースしたら「なんだこのクソ運営が!!」とか言われて落ち込みましたね(笑)。

一同:(笑)

松山:僕もありますよ、それ時々。(笑)

北尾:でも文句言ってくれるお客さんは文句言ってくれるだけの理由とかがあるから、それをどうハッピーに変えていくかとっていうのは重要ですよね。

松山:想いがないと文句も言わないですもんね。

片山:皆さんユーザーと向き合うことをすごくポジティブに捉えている。そういう姿勢やスタンスがサービスを良くしていく上で生産的なのかもしれませんね。

北尾:私達はドライバーさんもいるので、50,60代で初めてソーシャルメディアに自分が登場するパートナー企業のドライバーさんもいて、彼らの意見を聞くのも楽しいです。「初めて自分がYouTubeに取られました。」とか、そういうのもドライバー同士で盛り上がっているみたいで、普段は別のハイヤーの運転手さんなんですけど、「Uberのシフトの時は面白いお客さんがすごいいっぱいいるんで楽しいです。」とか言ってくれて、そういうのを聞くのも嬉しいです。

片山:いいですね。そういったパートナーや関係先との密なコミュニケーションもサービスを良くしていく上で、重要だと思います。

グロースハッカー流の情報キャッチアップ術とは

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片山:次の質問なんですが、ご担当されているグロースハックとか共創意識したPRもそうなのですが、(もともとベースの知識や近い概念・コンセプトはあったにしても)比較的新しく出てきた領域じゃないですか。日々のスキルアップとか勉強とかそういったことのはやられているのでしょうか。

山口:エンタメ作る人間なので、世の中の面白いものは出来る限り把握していないとまずいなと思っています。ユーザーも体験したことによって、感性も変わっていきますよね。例えば、映画の『アバター』を最初に見て3Dの臨場感を体験した人って、ちょっと(これからも)3Dに対して期待すると思います。そういう感動を知っておかないと何も提供できないな、と。なので、ひたすらマンガを読んだり、ジャンプやマガジン、ヤングジャンプなどの週刊誌を毎週読んだり、映画を見たり、仕事中もアニメを横で流して、最新のエンタメ情報を早くキャッチアップしています。最近だと例えば宝塚歌劇とかにも行きたいなと思っています。

松本:その業務用の勉強とかはしないんですけど、やっぱり面白い他社のゲームとか、心理学系とかUI/UXとかデザイン系のキャッチアップはしていますね。・・・あと、グロースハックジャパン!

一同:(笑)

渡邉(GHJ編集):ありがとうございます!!

山口:僕も、もちろんですよ!!!(笑)

片山:重要な情報源として機能しているようでうれしいです。(笑) 皆さんいかがですか。

松山:ちょっと違うところかもしれないんですけど、僕は元々エンジニアの志向が結構強い方なのかもしれないと思っていて、プログラミングの勉強やキャッチアップはまあ常にやり続けたいなと思っているのがあります。先の3年後か5年後を含めて、こういう世界になっていくのだって言うのは、技術が起点になったりするケースが多かったりするので、そういうところは新規技術の情報は多く見てキャッチアップしていますね。それこそ大学の研究室の人がみる論文も日々追っていたりもしています。

北尾:やっぱり人と会ったりとか、面白い人と知り合っていくことですね。その他、情報収集のやり方として、ソーシャル上で面白い情報とかニュースとかあったら、それをクリップしてevernoteにまとめていたりしつつ読んでいたりします。あと忘れがちなので、Facebookとか自分のウォールに必ずそのニュースがあるようにあえて意識的に投稿して残しています。

片山:ありがとうございます。それと関連するのですが、最近気になっているサービスとか本とかありますか。皆さんの競合とかはリンク貼らないようにしておくので、ご安心ください。(笑)

松本:ボードゲームが最近面白くて、買っています。あとは小さいカードゲーム系。Webサービスで言うとクックパッドが好きですね。UXに関して真摯な感じがするし、最近は開発のアウトプットも多くてとても勉強になります。

山口: 最近注目しているので言うと、MMORPGですね。ユーザーとの接点が参考になります。あと、他で言うと、アイドルグループはエンタメコンテンツ的な観点で見ても勉強になりますね。AKBとか嵐とか、手を振っただけでお客さんが「キャー!」となるすごいいい空間、あの空間はゲームにあったらいいかも。

片山:確かにアイドルのエンターテイメントは最高のUXの例かもしれませんね。

松山:Filmarksは映画のレビューサイトなので、やはりクックパッド、食べログさんみたいな最大手の口コミ・レビューサービスがどう成長してきたのかは気になっていますね。あとFacebookとかTwitterとかのサービスのアップデートも常に良く見ています。改修の履歴とか見ています。書籍で言えば、リーンアナリティクスの著者が出した最新刊の日本語版も出たので気になっていますね。分析の定性・定量評価も併せて実施する例がでていて勉強になります。

北尾:スリープマイスターは気になっています。見ているだけで面白いです。

山口:御社のサービスとセットで考えると、良さそうですよね。

北尾:昼寝オンデマンドしたいんですよ、極上の昼寝場を提供。昼寝ドライブみたいな。(笑)

松山:プロモーションになりそうじゃないですか。

グロースハッカーたちの今後の目標

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片山:面白いですね。実施されたらぜひ教えてください。最後の質問なのですが、今後の目標やビジョンを教えてください。個人としてと、サービスご担当としての2点からお答えいただけたらと思います。

山口:個人としては、もっとユーザーのことを考えられるようになることですね。どういうことかというと、男性女性とか年齢だけじゃなくて、例えば、最近家族とちょっと仲が悪そう、とかそういったところまでいかにユーザーのことを想像できるかがサービスを作るうえでカギかなって思っています。

サービスとしては、やっぱりDeNAゲームってブランドがすごい良いよねというような状態で進んでいくのが会社にとってもユーザーにとっても、すごいハッピーだなと思うんですよ。今少しずつ始めてはいますが、お客さんがすごく長く遊んでいてくださるので、その遊びの体験をちゃんと最大化させていきたいなっていうのがありますね。「DeNAで働いてるんだ」って言ったら、「あのすごいいい会社」って言われるような関係を作っていきたいなって考えていますね。

松山:個人としての目標と会社としての目標にあまり区別が無いんですけど、Filmarksというサービスがまだ(規模的に)子どもみたいな感じで、ユーザー数も少ないですし、マネタイズも全然できていなくて、今の規模のままだとそこそこ良いサービスで終了しちゃう状態だと思っています。なので、ユーザー数増やして、マネタイズまで成功できて、初めてこうビジネスとして成功したということになるわけで、僕も成功したと言えるまではグロースハッカーだと自信持って言えないと思いますし、そこをまずは目標にして頑張っていきたいなと考えていますね。

北尾:私もあんまり(個人とサービスの目標の)差はないんですけど、Uber東京としては世界で一番ポテンシャルがある街東京を、さらに 大きくしていきたいと思っています。あと今年は他の都市でも広げていきたいと思っています。コミュニティマネジメントをさらに強化し、外向きのいろいろな活動をやっていきたいと思いますね。

松本:個人の目標でいうと、仕事の話で言えば、今期からステーションメモリーズ!とかその前の担当アプリでやっていた実績が評価されて、もうちょっと広い範囲で複数のアプリの開発/グロースハックを担当することになったので、エンジニアとしてのプレイヤー活動とマネジメント業務とのバランスをうまく取ることが目標です。また、結構感覚値的なところで、どんどん改善を進めていたことを、もっと他の人に教えたりとか、他の人もグロースハックできるような数字的な部分とやりかたをノウハウとしてまとめていくことも目標かなと思っています。サービスの話で言えば、もちろん長く続けていこうというのがあるんですけど、例えば「奥多摩へ行こう!」というイベントをやっていて、最近ユーザーさんが小旅行みたいな感じで奥多摩に行くというリアルイベントも走っているので、そういうゲームを通じて新しい体験をユーザーに提供するっていうことをもっとやっていきたいですね。

片山:ノウハウ体系化っていうのは重要ですね。皆さんそれぞれ素晴らしい目標をお持ちで、サービスの今後も本当に楽しみです。パネラー間のディスカッションも積極的にしてくださり、ありがとうございました。これで取材は以上になります。本日は誠にありがとうございました。

●後編を終えて ~筆者から~
前編にもふれたユーザーさんとの向き合いやサービスの成長がそのままやりがいにもなっていて、とても前向きな姿勢が勉強になりました。グロースハックの思想の大事な要素にユーザーファーストがあることは周知の話なのかもしれませんが、それを改めて感じた次第です。また、このインタビューの後に、例えばモバイルファクトリーさんがご上場されたりと、詳しくは書けないことも含めてですが、この記事執筆をしている間にも各参加企業さんの中で大きな動きがたくさんありました。

本当に勢いのある企業の現場責任者として一線を戦っている人達とお話でき、尊敬できることがたくさんありました。今後もこういったインタビュー企画を随時続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

◆◆各社さんからのお知らせ◆◆
・モバイルファクトリーさん
「ステーションメモリーズ!」:http://ekimemo.com/

-プロモーションコード:1y9z04zt

-入力特典:1週間、1日の位置登録回数制限を気にすることなく、駅を取り放題にできるオレンジライセンスというアイテムが入手できます

-入力方法
①駅メモ!をインストール(AppStore/GooglPlay)
②チュートリアルを突破
③画面右上の設定アイコンをタップ
④「個人設定」をタップ
⑤画面中央に「秘密のコードを入力してネ」とある欄に該当コードを記入

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・つみきさん
※グロースハッカーを募集中です!※
日本一のグロースハックチームを一緒に作りましょう!グロースハッカー募集! – Wantedly
https://www.wantedly.com/projects/16642

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

WEBサービスの現場最前線で活躍する人達のグロースハック座談会(前編)

<第1回 グロースハック座談会@電通オフィス>
【スピーカー】
・UberJapan株式会社 北尾恵子 氏
・株式会社つみき 松山岳史 氏
・株式会社ディー・エヌ・エー 山口恭平 氏
・株式会社モバイルファクトリー 松本祐輔 氏
【インタビュアー】
・株式会社電通 片山智弘

フロントエンジニアリング × チームマネジメント

株式会社電通 片山智弘(以下、片山):本日はよろしくお願いいたします。ファシリテーションをさせていただく片山と申します。それでは早速お話に入っていければと思います。まず初めに会社名とお名前、そしてご担当されているサービスと業務内容について簡単にお話し頂ければと思います。じゃあ時計回りで行きましょうか。

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株式会社モバイルファクトリー 松本氏

株式会社モバイルファクトリー 松本祐輔(以下、松本):はい。モバイルファクトリーの松本と申します。メインで担当しているサービスは「ステーションメモリーズ!」という位置情報を使ったソーシャルゲームになります。全国にある駅をかわいい女の子と一緒に、アクセス/チェックインをしてお互いに奪い合って遊びます。

片山:松本さんはどういった業務を担当されているのですか?

松本:業務としては、割と手広くやっているのですが、僕がメインでやっているのはフロントエンドエンジニア です。フロントエンドと言うと、会社によって何をやるか色々違うと思うのですが、弊社ではjsとかHTMLとかcssとかの技術的な部分と、あとはUIとかUX、ユーザーが触りやすいアプリをつくるユーザー体験であるとかをひっくるめてやっています。他には、フロント(エンジニアリングの)業務周りで、全社的な技術力の向上であったり、デザイナーとかイラストレーターのマネジメントとかをやっています。

あとは担当しているステーションメモリーズ!において、改善サイクルを回しやすくしたり、開発効率をあげたりするために、チームマネジメントやシステム設計、開発フローの構築などを行っています。 グロースハックの関わりとしてはフロントエンドとして、UIやとかUXを上げ改善するため にユーザーの反応を見たりとか、実際のデータを分析してユーザーがつまずいている部分をみて、どんどん改善していき、よりゲームを面白くデザインするところかなと思っています。

人気ソーシャルゲームのプロデュース業務

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株式会社ディー・エヌ・エー 山口氏

株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA) 山口恭平(以下、山口):DeNAの山口と申します。

今の部署で言うと、アプリとかリリースしているゲームを全般見ているのですが、その中でも僕が立ち上げた「三国志ロワイヤル」というタイトルの話が今日はメインになるかなと思っています。現在100万ダウンロード以上のソーシャルゲームなのですが、(自身がプロデューサーとして)最初に出したアプリのタイトルとして、結構色々な試行錯誤をしてきたので、今日はそんなところを話そうかなと思っています。よろしくお願いします。

片山:ありがとうございます。山口さんは普段はどういったお仕事をされているのですか?

山口:ちょっと僕説明難しいのですけど(笑)、まずプロデューサーという立場からお話するとタイトルの方向性とか、あとチームビルディングとか開発プロセス管理とかですね。このタイトルはこの戦略でいくのかとか、(三国志ロワイヤルの例で言えば)三国志の市場ってどれくらいあるのだとか、そもそも三国志のファンをもっと増やすためにどういうことを考える必要があるか、そういったところまで全部設計する。マーケティング施策もユーザーとのコミュニケーションのポリシーとかも全部決めていくっていうのがプロデューサーとしての役割です。

その際に大事にしているのは、もっとユーザーと近くなろうと心掛けることです。結局僕たちが提供しているのは、面白さなので、バリューってそこなんですよね。でも、面白さってKPI立てられないじゃないですか。ユーザーにゲームがどう思ってもらえているかって測りにくいものですよね。そういう見えないKPIとかユーザーがどういう風に思っているのだろうというところへ深く入り込むことが大切だと思っています。そうすると例えばゲームの中だけでなく、カスタマーサポートの返信が3時間だったのか5分だったのかのところとかは効果として定量的にはわからないけど、それは5分の方がいいので、それがどういう意味があるのか意味付けして、チーム全体で動いていくというのをオーナーとしてやっているという感じです。

話題のUberのコミュニティ作りを担当

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UberJapan株式会社 北尾氏

UberJapan株式会社 北尾恵子(以下、北尾):はい。「Uber」の北尾と申します。(サービスのご説明)まあUberはあれしかないんで!

一同:(笑)

片山:サービス概要って言うとなんて説明すればよいでしょうかね?高級タクシーっていうか・・・・。

北尾: Uberはスマートフォンでハイヤーとタクシーの配車ができるサービスです。そこのコミュニティづくりを全般的に担当させていただいています。

私はざっくり言うと東京というコミュニティを盛り上げるとか、最終的にはうちで利用者の方が盛り上がってくれるというか、Uberを使ってハッピーになってくれるというのが会社としての目的なので、私は何の役割というと、そのコミュニティを盛り上げるために外向けのコミュニケーション全体的に全部担当させていただいています。

そこで、グロースハックという言い方かわかりませんが、ユーザーの数を増やすとか、満足度を上げるとか、そういうところがもしかしたら今回のこの記事の中ではお役に立てると思います。具体的に申しますと、カスタマーサポ-トとあとPR、コーマーケティングとプロモーションといったマーケティングのところと、あとはソーシャルメディアでの自社での発信とかそういうところを主にやっております。

500万レビュー!日本最大級 映画レビューサイトのグロースハッカー

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株式会社つみき 松山氏

片山:では最後、松山さんお願いします。

株式会社つみき 松山岳史(以下松山):はい。株式会社つみきの松山と申します。担当は「Filmarks(フィルマークス)」という映画のレビューを書くためのサービスですね。ちょうど昨日プレスリリースを出したのですけれども、現在500万マーク(レビュー数)を突破していて、日本最大級の(映画)レビューサービスと言ってもいいのではないかという感じです!

松山:仕事内容は名刺の肩書にも書いているのですけれども、グロースハッカーという位置付けで、Filmarksの成長をさせることが僕の主な仕事内容です。グロースハック、そしてユーザー数を増やしていくことは、チーム全体でやるべきことが大切なので、その中では、まずKPIの設定をし、その成長スピードを上げていくために、開発サイクルを改善していくことです。その後も具体的に施策を打っていくと言うことになるのですけれども、その中でもどういう施策が効きやすいのだというところを見つけて、更に細かく最初に決定した指標を定めます。

その後みんなで(その指標に向かった)ABテストの案を出して、分析していくのですけれども、僕は(その案出し作業のところでは)必ずしもメインではないなと思っていて、方針とチームを作るところが一番大きな役割かなと自覚しています。

グロースハックにおけるKPIとは?

片山:ありがとうございます。それでは少しずつ掘り下げていこうと思うのですが、色々とご質問をさせていただきますので、守秘義務の範囲で教えてください(笑)。また、私だけではなく、参加者の皆様の間でも質疑応答出来ればと思っています。まず、つみき松山さんは名刺の肩書もグロースハッカーということで、(松山さんだけではなく、)社内でグロースハックのチームを組織してやっているのでしょうか。

松山:グロースハックのチームと言う肩書は無くて、サービスの方向とKPIをフェイズ毎に分けてそれに向かってやっていくチームですね。それを僕と社長と2人で中心に。

片山:社長と2人でですか!?社長も(経営だけではなく、サービスの)KPI数値も非常に意識されている?

松山:そうですね、僕が分析結果を元にこうすれば数値があがるのではないかという仮説をあげて、それを元に議論をすることを社長と繰り返していますね。

山口:KPIは何を見ていらっしゃるんですか?

松山:(2014年の)7月~12月までの5ヶ月間は「初日クリップ率」というのですけれども、Filmarksには見たもの「マーク」するのと、見たい映画を「クリップ」するという2つの動作があるのですが、特にクリップの方に重きを置いて、初めてクリップするまでの割合をKPIにしていきました。それが高いと継続的にマークもクリップもして使ってもらえると言う仮説を、まず、データで示すと初回のクリップ率が一番落ちているので、ここから上げていったらいいのではないかと伝えて、サービスのKPIに設定したという理由があります。

片山:最初のチュートリアルの段階でFilmarksのアプリは3クリップくらい映画を選んでするじゃないですか。あれもそういう施策の一環なのでしょうか。

松山:はい、そうですね。最初のこの設定があるだけで、クリップをさせる施策なのに結果的にマークまで増えて、アクティブ率がすごく上がります。それが一例です。

片山:いいですね。北尾さんのところでは、「盛り上げる」とか「利用者をハッピーにする」というのがミッションあると言うことでしたが、それはイメージとしてはわかるのですが、具体的に盛り上がったというための数字などを設定したりとかをされているのでしょうか。

北尾:そうですね。新規のユーザーさんがどれくらい増えているのかというのは市場の広がりとして見ていたりしますね。後はソーシャルのいいね!数や、ソーシャルのリーチ数を見ていたりします。

片山:ソーシャルのリーチ数と言うのは件数や届いたフォロワー数の総和、定性的に言えばポジネガ判定(Twitterのツイートの文脈を見てその発言がポジティブ、ネガティブか判断する手法)などもあると思うのですが、皆さんも見ていたりするのでしょうか。

山口:見ていますね。今Twitterはリーチ数がすごく見やすくなっていたりするじゃないですか。リアルタイム検索も見ています。ちなみに結構くだらない話で言えば、メディアとか出た後も自分の名前とかで検索していますね。

一同:笑

片山:今日の取材で1記事増えますね(笑)。

山口:そうですね(笑)。取材記事ページで「ツイートする」って(プラグインが)あるじゃないですか。あれがどれだけいったのかなとか。

北尾:確かにそれとかも見たりしますし、Twitterとかもうちはハッシュタグとか付けていなくて、「Uber(ウーバー)」などをキーワードにして、どれくらいの人がつぶやいているのか、一年前とかに「早く(Uberが)来てほしい」ってつぶやいていたツイートに「Uber来ました!お待たせしました!」とか返したり、そういう極めてアナログなこともやっています。うちは(サービスとしては)非常にデジタルなのですけど、最終的にはドライバーがいて乗ってもらってという人と人との体験があるので、そういうデジタルなところでもアナログなコミュニケーションって非常に重要かなと思っています。

片山:私もとても大切だと思います。あと、Uberさんはクーポンや利用時のチケットのインセンティブ施策があるじゃないですか。あのサービス設計で1,000円だけ引くとか、イベントに呼ぶとか色々なやり方があるのと思うのですが、そういった設計も北尾さんが手掛けていらっしゃるのでしょうか。

北尾:そうですね。例えば、最初2013年11月にUberのテスト運行をスタートした際に、初回のご乗車が5,000円引きで乗れるのを六本木近辺でやっているときがあって、平均利用金額を見ると割引をやりすぎたなってところがあったので、そういう利用動向を見て色々やっていますね。

なので、例えば今は4,000円引きクーポンを出しているのですが、2,000円引きを2回にした方がいいのか、1,000円ずつを区切ってやっていった方が良いのかなどを検討しています。カフェアプリと連携して清澄白川の当たりで、カフェ巡りをUberでしようという施策をやっていて、これは1,000円ずつに分けているのですが、どれだけ同じクーポンコードで何回いくら使えるかで利用率がどれくらい高いとか話題性があるのかはモニタリングしたりしていますね。それがPR的なネタになったりするかしないか、デジタル起点がいいのかリアルのレストランなどのインストアで直接置かせてもらった方がいいのか、ちょっとしたおまけがあったりするとどれくらい使われたりするのかを見ていたります。

片山:結果が気になりますが、守秘義務で書けないかもしれないので、この辺にしておきましょうか(笑)。

サービスをグロースさせるチームビルディング

片山:山口さんと松本さんは割とマネジメントの役割も比較的多い印象がしたのですが、チームでユーザーをグロースさせていく中で、マネジメントやチームビルディング的な観点で気を付けていることとか意識されていることはございますか。

山口:マネージャーではないのですが、他部署の人とチーム組んでやる時って、「僕達ってどこ向かっていたんでしたっけ?」というところが結構曖昧になることが往々にしてあって。1個のゲームでも、すごく難しいのが、数字だけで面白さが語れないというのがあって、いくらチュートリアルの突破率が高くても、例えばチュートリアルがワンタップで終わったら、チュートリアル突破していても、まあユーザーには通じていないじゃないですか。こういうのは結果指標でしかないので、ユーザーがどういう風な感情や遊び方になってくれたら面白いというのをちゃんと作っていかないといけない。そういったところをみんなで方向性がぶれないようにしています。

あと結構近視眼的な思考になりやすいですからそれも気を付けています。膨大なデータが取れる環境にあるので、そこだけ見て一部だけ直せばよいのではないかという思考になりがちなんです。

片山:数字強い人多そうですもんね、御社は(笑)。

山口:(ゲ-ムに関する)あらゆるデータが取れています。でも、データはゴールにたどり着くために必要な要素のひとつであり、ゴールを見失わないためにどこまで具体的に描けるかとかを大切にしています。ただ、そもそも(そのゴールイメージが)ちゃんと正しいのかというのもわかるのが結構先の話で、チームメンバーがそれをどのタイミングで何を意識するかが違ったり、そもそも面白いと思わなかったりとか、色々違うので、それをすり合わせるのが一番大変かなと思いますし、やらないとダメだなと思っています。

片山:そもそも最初のゴールイメージに戻ることと、その共通認識を作っていくのが、大切ということですね。松本さんいかがでしょうか。

松本:3つあります。1つは今ちょうど新規の立ち上げをやっているのですが、立ち上げた時にちゃんとチームの哲学とかアプリをユーザーにどう触ってほしいのかということを決めるのはかなり重要視しています。そうしないと、ユーザーからの意見が出た時にどんどんぶれてしまうので、ユーザーからこういう意見が出ても自分達はこう作っていきたいから、それは自分達の道を突き進んでいった方がいいという意思決定も結構重要視しています。

あともう1つは自分達が作って楽しいものを作るということです。数字を見ていたら、ここを変えた方が数字が上がるとわかっていたとしても、それは自分達が楽しいことなのかとか、自分達が一番のプレーヤーなので、それを遊んでいいと思うのか。若干雑な例を出すと、退会しにくくなるようにすれば退会率は減るかもしれませんが、それって自分達がユーザーに対して嫌な事をしているという気持ちになるじゃないですか。

最後は(作ると決めたことは)あまりこだわりすぎないこと。出してみないとユーザーの反応はわからないので、作る時に悩んで時間をかけてしまうよりかは、ある程度のものが出来上がったら公開して、ユーザーの反応を見て解析・改善していくようにするというのが気を付けているところです。

片山:いいですね。「こう触ってほしい。」と言う哲学は持ちつつも、ユーザーの声も聞くという、このバランスを取っていくことがエンジニアでチームをまとめていく上でも重要と言うことですかね。定性的なユーザービリティの設計は難しいですね。

山口:そうなんですよね。この前、(ある画面の)演出を0.4秒速くしたんですよ。反応速度がコンマ数秒遅いから気持ち悪いと思ったからです。適切な速さって、データで取れないじゃないですか。でも、そっちの方がやはり気持ちが良いユーザービリティなんです。パズルゲームがわかりやすくて、(動作が)速すぎても気持ち良さってわからなかったり、絶妙な感じの演出をテンポ良くやってくことが気持ちいいとか、基準がゲームごとで違っています。あと、電車の中でスマホを持っているところを想像して、今スマホはどんどん大きくなっているから、昔は左上から画面のボタン置くことは従来重要だったけれども、今電車乗って片手で(大きな)スマホ持っていたら左上を押せない。ということがあったり。でもそれを表すデータが取れないのですが、普通に考えたらそりゃそうだよね。というのをちゃんとやっていくのを結構大事にしています。

松本:それは結構ありますね。ステーションメモリーズ !は移動しないと出来ないゲームなので、電車や移動中に触ることが多いので、外でも見やすいとか、片手で操作できることがすごく重要です。数字は取れないんですけれども、作る上でこうしましょうと言うのはしっかり決めてやっています。

山口:例えば電車の中で通信たくさん走らせていたら、大変ですもんね。

松山:(そういう設計は)どういった意思決定プロセスで考えられているのですか。トップダウンでこういう機能の方が面白いと誰かが決める人がいるのでしょうか。

山口:究極的にはプロデューサーがその決定をする立場ですよ。ただ、すごい反論食らったりもします(笑)。「俺こっちがいいと思うんだけど!」って言ったら、チームメンバーから「えっ!?」みたいな。

松山:僕らの場合は社長が元々デザインへのこだわりやニーズの把握力があったりするので、そこは任せています。弊社社長もそうですが、山口さんのように決められる人が権限を持っているのはいいなあと思って聞いていました。

山口:大事なのはどういうユーザーが遊ぶのかというペルソナとかそのターゲットの人とかですよね。三国志好きな人って、30代後半から40代くらいの男性で、本とかマンガを読むのが好きな人だと思っていて、その人と自分って明確に違うじゃないですか。自分は小さいころから三国志にずっと触れているけど、(メインの)ターゲットとは違うので、そのターゲットの方に直接、「こっちとこっちはどちらが気持ちが良いですか。」と聞いて決定することもありますね。

ユーザーに選ばれるためのコミュニケーション

片山:つみきさんは(今回のFilmarksの自社サービスだけではなく、)制作会社も兼ねていらっしゃるので、そういう制作知見に基づく判断も良いなと思いましたし、山口さんがおっしゃっているユーザーからのヒアリングもサービス設計の手段としていいですよね。最近皆さんが今の役割でやっていらっしゃる直近の施策について聞いてもいいですか。

松本:さっきの話に絡めると、最近、アプリの画面上にあったメニューボタンを画面下に持ってきました。iPhone6とかiPhone6plusが出てきて、自分がプレイしていても、他のプレイしている人を見ても、届かないというユーザーが出ていたので、変更しました。後は、継続率周りの改善で、チュートリアルでページ毎にどこで離脱しているのか計測して離脱の多いところを改修したり、他にも、RPG系のソーシャルゲームだとチュートリアルで(アプリの使い方を)長めに説明しているのですけれども、位置情報ゲームだと移動しないことはわからないので、チュートリアルで「移動してみよう!」っていったら、退会しちゃうんですね。

一同:それは難しい!(笑)

松本:なので、チュートリアルはサクッと終わらせて、終わった後にどんなことをしたらいいのかを教えてあげるというのをちょっと作り込んでみたりとかしています。

山口:三国志ロワイヤルでは、広い話で言うと、それこそソーシャルメディアとかユーザーと接点持てるところをどうしていくのかまで考えています。ユーザーインタビューを実施したり、あえてメディアに出るとか。今まで、うちの会社ってプロデューサーがあまり表に出なかったんですけど、「はじめまして。プロデューサーです。」みたいな感じでメディアに出たりとかしています。するとユーザーが「お前が責任者か」とか。

一同:(笑)

そういう風に表に出て、個人として認識してもらえることがまず大事かな、と。

北尾:それと関係ありますが、前に元電通のさとなお(=佐藤尚之)さんが前におっしゃっていたのが、「ソーシャル時代になって、表も裏もないというか、全てを全部一貫して一人の人」みたいな発言をしていて、私も結構ソーシャルとかは結構ダダ漏れと言うか、色んな人とFacebookでも友達になったり、名刺交換しても「Facebookとか申請していいですか?」みたいな感じなので、私が週末どこに行ったとかいうのもバレバレで(一同 笑)。でもそういうところでどんどん点を打っていくと言うのですかね、それでファンとか自分が何やっているのかわかっていくというか、それがお仕事にもつながったりするので、今後は「Social」でつながるというのが本当に加速する気がします。

山口:究極的に使うのはユーザーじゃないですか。Facebookでつながりたくないとか顔バレしたくないというのはユーザーからしたら結構どうでもいいんです。運営側が出ることでサービスよくなるのだったら、出ようよという話で。僕からすると。逆に出るなと言われたら求められていないのだから出ないですが、とにかく運営都合で考えたくないですね。

片山:運営の都合を押し付けないのは重要ですよね。Uberさんの最近の施策はいかがですか。

北尾:そうですね。3つくらい新しく始めたのがあります。まずドライバーへのヒアリングで施策を実施しています。うちって個人情報ほとんど取っていないんです。名前とメールアドレスと電話番号、あとクレジットカード決済時にスキャンするくらいで、ですので、ドライバーさんに「この頃こんな人達が増えている」などを教えてもらったりしています。

朝はUberで通勤する人が多くて「通称ウバ通」と言っているのですが、昼間はお子様を持ったお母さんとかが結構使ったり、夜は会食とかデートで使うみたいな、ユースケースを見るようにしています。そして、それを踏まえてママアウトリーチの施策の一環で、この間yelpさんとママ向けのイベントに弊社も入らせてもらって、帰る時はUberで帰ろうと促すような、そういうユースケースごとの施策をしています。イベント協賛やターゲットをされたメディアに記事を書いてもらったりとかクーポンを掲載するのをやったりとか。

あともう1つはリアルなところにも頑張って出るようにしていて、実店舗にPOPを置かせてもらったりしています。クーポンコード2,000円分のコードが10,000枚本社から送られてきてどうやってこれを配ろうと思って(笑)。だから実店舗の人の置きたいというのをブログや自分で開拓して集めて配って素敵な感じのレストランとか美容院で配ったりとか、そこにPOPだけじゃなくて、トイレやメニューの中に貼ってもらったりとかもあります

。ちなみに今だったら「(初回限定に限るということをきちんと明記して)Uber0円。電車に揺れて160円、タクシー数千円」といったような比較コピーを使ったりしています。ですので、リアルでもそういう目につくところに置かせてもらったりしていますし、それが結構いい結果につながっていたりします。

最後にはユーザーさんのハッピーな声をユーザーさんに言ってもらうことも大切かと。更にリアルな人の声っていうのは信頼やシェアにつながったりするので。例えばイルミネーションをUberで行ってみようというのとか、夫婦の日というのが11月22日にあったのですが、その日に「夢のUberで行く夫婦ラブラブプラン」というのをソーシャルで聞いて、その素敵なプランをUberで実現したい!というのを募集したりしました。必ずブログに書いてくれるというのを条件に集めて、Uber代が無料になる素敵プランをネットにあげてもらいました。なので、そんな感じで、ユーザーさん発のコンテンツを増やしていきたいなと思っていて、これがグロースハックなのかはわからないですけど、山口さんがおっしゃっていたように本当にユーザーさんの声とかをどんどん集めていきたいなと。

松山:色々仕掛けていたりするのですけれども、ユーザーイベントを12月に初めて開催してユーザーさん100名越えの人に集まってもらいました。それが結構盛り上がりました。映画が本当に好きな人で語り合うのってすごい熱量だったりします。まだユーザー数もそこまで多くなく、やはり濃い人達が集まっているので、そこから広がっている勢いとかも感じていたりします。LINEのグループもできていて「またやろうね!」とみんな言っていて、この前の土曜日もオフ会のオフ会みたいな感じで集まっていたりして弊社社員もそこに何人か入っていたりして本当にそこで色々議論したりとかこういう機能あったらいいねということを話したりしていたので、こういったイベントを定期的にやっていきたいなと思っています。やっぱりユーザーの声はすごく大事だなと感じています。

山口:その時は「中の人です!」と言って参加するのですか。

松山:イベントを僕らが開いて、各テーブルにメンバーが入っていって一緒にゲームに参加したりとか、二次会も一緒に行ったりとかそういう感じでやっていたりしますね。あとは食事付きの試写会とかやっています。映画を見た後にその映画で出てきたメニューを食べながら話しています。

皆:行きたい(笑)!いいですね。

(以上:前編)

●前編を終えて ~筆者から~
 皆さん、サービスへのこだわりや愛着とユーザーの体験価値や声を大切にする志向性を同時にマッチさせて施策をやっている面が非常に印象的でした。グロースハックもHOW TO部分を突き詰めれば無機質な改善施策に見える一面があったりしますが、その上層にある思想の部分の大切さを改めて感じた取材でした。また、サービスの成長を中心的に担っている参加者同士ということで、参加者間の質疑や議論も大変盛り上がりました。
後編はインタビューアーの皆さんの現場での苦労や課題、そして自己研鑽や最近のトレンド、今後の事業とご自身の目標についてお話ししていただきます。

◆◆各社さんからのお知らせ◆◆
・Uberさん
グロースハックジャパン読者限定クーポン!
「Uber」:https://www.uber.com/ja/
-コード:growthhackjp
-割引:初めてUberをご利用のお客様に限り、初回、2回目のご乗車が2,000円まで無料となります。ハイヤーのみに適用されます。
-有効期限: 2015年4月30日

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・DeNAさん
「三国志ロワイヤル」:http://on.mbga.jp/tkrpt
すべての三国志ファンに贈る本格戦略シミュレーションRPGです!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
※次回はモバイルファクトリーさん、つみきさんからのお知らせです。

基本を見直そう。グロースハックに関してよくある4つの勘違い

facts growth hack
みなさんは、「グロースハック」と聞くとどのようなイメージがあるでしょうか?日本国内でも多くのスタートアップが誕生する中で「グロースハッカー」という人たちが注目を浴びています。ただ、この「グロースハック」という言葉は人によって認識が様々で、その中で勘違いも広まりつつあります。ここで改めて、グロースハックとは何かを確認できる記事を紹介します。-growth hack japan

なお、本記事は多くの企業の成長支援をしているGrowth DevilFacts About Growth Hacking Everyone Thinks Are Trueという記事を翻訳しています。

グロースハックについて間違った認識が広まっている?

みなさんは「グロースハック」という言葉を耳にすると、なにか小難しいよくわからない専門的なもので、あまり手を出したくないと思いがちかもしれませんが、実はグロースハックの基本的な考えはそれほどとっつきにくいものではないのです。

どんなビジネスにおいても、事業を発展させること(そしてそこから売上を立てること)を最大のゴールとすると思います。そしてグロースハックの目的もまさにこれと同じなのです。しかし、細かい部分にばかり着目してしまうと、これが漠然とした小難しい話に思えてきます。

今回は多くの方がグロースハックについて持っている間違った認識について4ポイントにまとめてご紹介したいと思います。

1. グロースハックは技術的なものである

グロースハックとは、なにも技術的な話ばかりするわけではなく、今あるリソースの中で、いかにクリエイティブで効率的な方法を探しだして、より多くのユーザーを集められるのかという取り組みです。つまり、どんな手段であれ、より多くの顧客に自分のプロダクトを買ってもらうための方法を見つけさえすれば、コードを書いたりしなくとも優秀なグロースハッカーになることだってできるのです。

2. グロースハックはただのバズワードである

マーケティングは顧客基盤を拡大させるためのものとされています。これはグロースハックにおいても同じことが言えます。そのため、グロースハックとはマーケティングで従来言われている概念をただ新しく、聞こえをよくするために言い換えただけのものだと考える人もいます。

たしかにマーケティングはグロースハックと似ているので、よりよいグロースハッカーになるということはマーケティングを基礎から学んでいくこと、とも言えるかもしれません。しかし、印刷広告やテレビCMなどの型にハマったやり方をする従来のマーケターに対して、自社のプロダクトを売るための革新的な方法を見つけ出そうとする点でグロースハッカーとマーケターは異なると言えるでしょう。

3. グロースハックは簡単で即効性のある解決策である

グロースハックを効果的に行っていくためには他にはない独創性が必要になります。仮説を立てたとしても、ほとんどの場合は期待を裏切る結果になってしまいますが、それでも何度も何度も立ち向かっていくことが必要です。あっという間にグロースハックできた!なんていう、そう都合のいいことはありません。

ここで肝心なのは、Twitterアカウントを作ってビデオムービーでも流せば、今までやっていなかったことだからと、それでもう完璧なグロースハックになっていると思い込んでいる人がいるということです。

4. クチコミで流行らせてしまえばよい

バイラル(ユーザーの口コミ効果)でプロダクトの認知を広める…言葉でいうのはとても簡単ですが、いざやろうとなると難しい問題です。仮にうまいこと口コミで拡散していったとしても、それが直接に売上やユーザー数の増加に繋がるとは限りません。

広告やビデオを流行らせることはたしかに事業の成長につながるかもしれませんが、それをしたからといって必ず成長が約束されているとは言えません。バイラリティーはグロースハックのやり方のひとつにしかすぎず、他にも方法はたくさんあることを頭に入れておくべきなのです。

まとめ

こちらのグロースハックに関する最も確実な手引書にも書いているように、グロースハックという言葉はSean Ellis氏から使われ始め、その後多くの優良IT企業が集まるシリコンバレーで広まりました。このことから、グロースハックというとすべてがITに関連しているというイメージが広まりがちです。

しかし、これは多くの人が勘違いをして抱いているイメージで、プログラミングができなくてもよいグロースハッカーにはなることはできます。(実際にSean Ellis氏自身も「プログラマーがグロースハッカーに向いている」とは言っていますが、「最終的には好奇心をもってユーザーと向き合えれば、必ずしもプログラマーである必要はない」としています。参考:プログラマーがGrowth Hacker(グロースハッカー)に最も近い存在なのはなぜ? Dropbox育ての親Sean Ellis氏に聞いた)

グロースハックの基本となる考え方はマーケティングと大きく変わらないですが、違いはそのアプローチ方法にあります。従来のマーケティングのような型にはまったやり方とは違って、自社の強みを生かした独自の方法を探し、仮説を立て何度もテストを繰り返していく中で、プロダクトを成長させていくのがグロースハックなのです。-growth hack japan

記事情報

growthdevil_logo
本記事は国際的なグロースハックエージェンシーであるGrowth DevilのFacts About Growth Hacking Everyone Thinks Are Trueという記事を翻訳しました。こちらのブログはWall Street JournalやWired Magazineにおいても紹介されています。Growth Devilはテクノロジー系のスタートアップの資金調達や急速な成長のための手助けをしながら、起業家のサクセスストーリーを発信しています。

日本初!グロースハッカーのための授賞式イベント開催!

皆さん、明けましておめでとうございます。グロースハックジャパン運営担当の渡邉です。本年最初の更新は、グロースハックに関するイベントのお知らせです。
japan growth hack awards

きたる2月10日(火)に、Kaizen Platform, Inc.が日本国内初のグロースハックに関する賞を創設して、その授賞式兼ミートアップイベントとして【Japan Growth Hacker Awards 2015】を開催するそうです。

イベント内容

本大賞は、Kaizen Platformに登録された1,300人以上(2014年11月時点)のグロースハッカーを対象に、クライアント採用数、採用率、勝率、報酬金額などを審査項目とし、計10部門の優秀なグロースハッカーを決定します。さらに、年間最優秀グロースハッカーとして、グロースハッカー・オブ・ザ・イヤーを決定します。日本で初めてのグロースハッカーに特化した賞です。

出典元:国内初、年間で最も活躍したグロースハッカーを表彰する「日本グロースハッカー大賞」を創設

上記にあるように、Kaizen Platformで、実際にクライアントサービスの改善に携わっている1,300人以上 (めちゃくちゃ多い!) のグロースハッカーの中から、女性向けサイト、Eコマースなどの11部門に渡って、部門ごとに優秀者を選定して表彰するそうです。

賞名称
グロースハッカー・オブ・ザ・イヤー
女性向けサイト部門
スマートフォンサイト部門
Eコマース部門
旅行部門
メディア部門
人材サービス部門
飲食部門
サービス/その他部門
最多採用数部門
勝率部門

当日は、各部門の受賞者からのコメントや、グロースハック事例の紹介もあるそうです。1,300人以上もの候補者の中から選ばれるグロースハッカーの方々の成功事例を聞けるので、皆さんのサービス改善に活かせるネタがきっと見つかるはずですね!

創設目的

日本グロースハッカー大賞の創設の目的は、グロースハッカーおよびその予備軍ともいえるWebデザイナー、Webデベロッパー、コピーライターがグロースハッカーとしてより活躍することを促し、業界を活性化することです。また、企業のマーケティング担当者に優秀なグロースハッカーを広く知ってもらうことで、Webのユーザー・インタフェース品質向上に貢献します。

出典元:国内初、年間で最も活躍したグロースハッカーを表彰する「日本グロースハッカー大賞」を創設

日本でも、ここ1,2年くらいで「グロースハック」というキーワードが認知されてきていると思いますが、まだまだグロースハッカーの地位や、プロダクトやサービス開発の場におけるポジションが確立されているとは言えません。

こういったイベントを通じて、日本でももっとグロースハックという考え方が普及して、開発や改善の場に当たり前にグロースハッカーと呼ばれるポジションの人がいて、当たり前にチームでグロースハックを行っている環境がある…という流れになっていくと面白いですね。

イベント概要

開催日時:2015年2月10日
場所:グラナダスィート (代官山)
参加:無料
定員:100名 (予定)
詳細/参加申込:http://growthhackerawards2015.peatix.com

イベントはおしゃれな街代官山の、結婚式が行われるようなおしゃれな会場で行われるそうです。しかも無料!これはもう盛り上がること間違いなしなので、グロースハッカーの皆さん申し込むしかないですね!

というわけで、新年初の記事では2015年の幕開けを飾るグロースハッカーにおくるイベントの紹介をさせて頂きました。それでは皆さん、本年もグロースハックジャパンをどうぞよろしくお願い致します。

デザイナーとの正しいおつきあいの方法「中級編」

■はじめに

デザイナーとの正しいおつきあいの方法「初級編」はご覧いただけましたでしょうか。 グロースハックにとって、デザインはその根幹をなすほど重要です。

初級編では全てのデザイナーに共通のコミュニケーションのポイントについてご紹介しました。
しかしデザイナーと言っても、その特徴は様々です。 この「中級編」では、ディレクションを行っている方々に向けて、特徴的な3つのタイプにデザイナーを抽出して、それぞれの持ち味に合わせた仕事の進め方と、コミュニケーション上の注意点を「やるべきこと」「やってはいけないこと」について述べていきます。

もちろん、ひとくちにデザイナーいっても、その意味合いの解釈は多様でカバーする仕事領域も広いため一概に分類できるものではありませんが、今回はあえてシンプルな3つのタイプをご紹介致します。

■特徴的デザイナー3つの分類

1、クラフトマン型 「クラフトマン」とは職人のことです。

クラフトマン型のデザイナーは、自分の技術を磨き、精度の高いデザインを行うことに誇りを持っています。

自分から何かアイディアを出して新しいものを生み出すことは苦手ですが、与えられた仕事は確実にこなします。

クラフトマン型はしっかりとしたディレクションを組み合わせることで、最高のプロダクトを出してくれます。

やるべきこと:ディレクションをしっかりと行い、可能な限り具体的に指示をする。「~~風に」「~~のような感じで」など、既存の事例を提示しながらイメージを伝える。

やってはいけないこと:投げっぱなしの依頼の仕方をする。

ゼロから何かを生み出すことはストレスがかかかる可能性がある。

2、アーティスト型 「アーティスト」はここでは芸術家の意味で用いています。

アーティスト型のデザイナーは、自分のセンスとアイディアに自信を持っています。
新しいものを生み出す力はいちばんですが、その反面、細部を言われた通りに作ることにはモチベーションが高くない場合が多いです。
そういった部分をバックアップすることで、優れたクリエイティビティを最大限に活かした美しいデザインを提出してくれるでしょう。
やるべきこと:作って欲しいデザインにかける熱い想いや、全体的なコンセプトについての情報を多く語る。
やってはいけないこと:細かい部分のリテイクを何度もかける。可能であれば細部はこちらで修正するくらいの気持ちで。

3、ビジネスマン型 「ビジネスマン」は文字通り経済性と数字を重視するデザイナーで、近年増加しつつある比較的新しいタイプです。

グロースハッカーと最も似ているのはこのタイプでしょう。

ビジネスマン型のデザイナーは、デザインを目的達成のための手段ととらえていることが多く、数値的な根拠を元にしたり、論理的な思考展開でデザインに落としこんでいきます。
そのため、コスト計算にも非常に敏感で、工数と効果が釣り合わない場合や論理的ではない提案をした場合は、なかなか飲んでくれない場合もありますし、雰囲気のデザインの美しさはあまり重視しないこともあります。
一緒にデザインを作り上げることで、素晴らしい結果を出してくれます。
やるべきこと:到達すべき指標を、数字や根拠をもとに説明する。コンセプトやターゲットユーザーについて互いに議論する。

やってはいけないこと:「なんかイマイチ」「もっとゴージャスに」など抽象的な指示をすること。

■おわりに

いかがでしたでしょうか。

一概にデザイナーを3つだけに分類できるものではありませんが、「ああ、社内のあの人はこのタイプに当てはまるな」とイメージできた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

もし、デザイナーとよく衝突して、うまくプロジェクトを進められていない…という心当りがある方がいたら、もしかしたらそれぞれのパターンでやってはいけないことを、無意識のうちにやってしまっているのかもしれません。

一緒にプロジェクトを進めていくデザイナーの特徴を理解して、伸び伸びと仕事を進めてもらえるようなコミュニケーションの取り方をしていくことで、最高のアウトプットをしてもらうのが、真のグロースハッカーと言えるではないでしょうか。

グロースハックジャパン的<11月>の一押しイベント

 はじめに:

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今後のトレンド、全てがWeb上でわかる訳ではない。
そうした時に是非検討していただきたいのが、イベントへの出席だ。
東京に集中しがちなイベントではあるが、ハッカソンやウェブサービスの披露会等色々と学びのチャンスは多いはずだ。
イベントの中で出会える人とのつながりが新たな結果を導すはずだ。

 イベント:

①TechCrunchTokyo
<11月18日>

ガジェット・IT系最大のメディアTechCrunchTokyoが開催するイベント。
特別なプロダクトやサービスを取り上げるサイトだけあって、熱気もすごい。
去年はRINGが優勝したが、今年はどこのサービスが優勝するのだろうか?
新サービスのキャッチアップや、知識習得の場になるのでは?
http://jp.techcrunch.com/events/techcrunch-tokyo-2014/

②TechCrunchTokyoハッカソン

<11月15日〜16日>
手を動かせるエンジニアが枯渇するのが、ハッカソンの問題点。
そうした問題点に関して企画職(デザイナーも)制限をしているというのは、ちょっと面白い試み。
エンジニアの比率が高いハッカソンになる予定なので、是非トライしてみては?
優勝すると①のTechCrunchTokyoに出場しプレゼン機会が与えられるとも。
http://tctokyo2014-hackathon.peatix.com

③KAIZEN x 株式会社ペンシル

<11月20日>
ABテストによるWebサイトのグロースハックを支援するKAIZEN社とWebコンサルティングを主業とする株式会社ペンシルのセミナー。両企業とも、アメリカでも勢力的に活動を行っているとの事なので、海外事例やトレンドを聞けるいい機会かも知れません。
http://www.pencil.co.jp/seminars/2014100700001.html

④プロトタイプ作成ツールPrott勉強会

<11月11日>
先月リリースされました、プロトタイプ作成ツールPrott
手書きで書けば、プログラムを組まずにプロトタイプを使う事ができる。
シンプルで、かつ非常にわかりやすいUIとデザインが作れます。
http://swtokyo.doorkeeper.jp/events/16356

⑥スタートアップウィークエンド

<11月21日〜23日>
日本でのハッカソンブームを巻き起こした、スタートアップウィークエンド。10回連続で参加するなど、スタートアップマニアすら発生させる本エベントは、多くの出会いや感性のぶつかり合いが発生します。そうした中で自分のチームとの議論や研鑽でいいものを作れるというのは、このイベントならではです。
http://swtokyo.doorkeeper.jp/events/16216

 最後に:

いかがだったでしょうか?
セミナーやイベント参加により、多くの学びやチャンスを得る事ができます。
是非皆さんも参加してみて下さい。

タスクを混乱させないためのコミュニケーションハック

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■はじめに

テクノロジーの発展によって、メールやLINEなどのさまざまなツールが発達し、どこにいても仕事の連絡ができるようになりました。グロースハッカーたるもの、当然こうしたツールを日常的に活用していることでしょう。でもそこには落とし穴もあるのです。

■メールやLINEは誤解の温床

チームの間でタスクの指示が混乱してしまうことは、グロースハックにとって致命的です。でも直接顔を合わせるミーティングに比べて、メールやLINEでの連絡はすれ違いが多いと思いませんか? それはこうした連絡方法が、言葉のみによるものだからです。実は人間は、言葉の内容よりも、表情や仕草などを頼りにコミュニケーションをしていることがわかっています。しかしちょっとしたコツを覚えるだけで、言葉のみのコミュニケーションでもぐっと誤解の数を減らすことができるのです。

1、主語と目的語を明確に

日本語の文法では、主語と目的語はそれほど重要ではありません。日常的なコミュニケーションでは、これらを省略しても何ら問題ありません。しかしミスが許されないグロースハックの現場では話は別です。「誰/何がやるか」という主語と、「誰/何に対してやるか」という目的語を、常に明確にしましょう。

2、連続して別の話題を投げない

特に焦っている場合にやってしまいがちなのですが、思いつくままに次々と様々なトピックを投げてしまうと、相手に見落としが発生する可能性が跳ね上がります。いずれにしても相手からのレスポンスがないと情報が届いたことは確認できないのですから、ひとつひとつ了解を取りながら進めるようにしましょう。

3、ローコンテクストに徹する

コミュニケーションには二種類あります。ハイコンテクストなコミュニケーションと、ローコンテクストなコミュニケーションです。ハイコンテクストとは、正確に意味を取ろうとするとき、その場で発された言葉以外に、文脈の力が多分に作用するものを指します。極端に言えば「あれはどうなってる?」などと曖昧な聞き方をするのはハイコンテクストです。こうした会話は文脈による補完が必要な分、すれ違いを生みやすい宿命にあります。「~~の案件の納期は~~までだけれど、進捗を報告してくれる?」といったように、言葉だけで成立するローコンテクストな会話を心がけましょう。

4、重要なものではなく、重要「でない」ものを区別する

基本的には真面目な仕事の会話といえど、緊急度が高く重要なものと、それほどでもなくゆるやかで重要度の低いものがあるでしょう。対面なら簡単なのですが、これが言葉しかないと意外と難しい。特に重要なものをより重要に感じさせることは難しいのです。なので逆に、ふだん重要でないものを区別するようにしましょう。具体的には、「そうだよー」のように語尾を伸ばす、「そうだよ☆」「そうだよ♪」「そうだよ!」のように記号をつけるなどが有効です。自分のキャラクターに合っていて使いやすいものを選びましょう。これによって、「そうだよ」のように言い切った場合に、シリアスさを伝えることができます。

■おわりに

いかがでしたでしょうか。これくらい言っておけば伝わっているだろう、という甘えがディスコミュニケーションのもと。スムースに仕事を進めるために、ちょっとした心がけを徹底して実践しましょう。

【サービスにおけるバランス】習慣と刺激のメリット・デメリット

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■はじめに

日々の生活において、習慣は大切です。
でもその反対に、刺激も欠かせない存在です。

人生において、毎日通勤に刺激的なトラブルがおきたら
疲弊してしまいますし、何もない毎日だと
灰色の中に埋もれていると錯覚してしまうかと思います。

さて、自社サービスにおける習慣と刺激は、
人生と同じくバランス良く感じる事が正解です。

習慣と刺激に関してメリット・デメリットを
ソーシャルゲームを例に勉強してみましょう。

■習慣と刺激

1)習慣のメリット
習慣のメリットは、何といっても無意識に行動ができると言う事です。
習慣化の学習においては、ユーザーメリットを想像させて、
意識の壁を超える事からはじまります。

ソーシャルゲームで言う所の、ログインボーナスです。
これは、ログインボーナスを無料で提供するという企業側の投資によって
成りたちます。(原価は、殆どかかりませんが)

ソーシャルゲームの運営企業は、
ユーザー減衰が高まる日を解析し、
その前後に価値の高いアイテムやキャラクターを提供している
と言えます。

2)習慣のデメリット
習慣化を高めすぎると、ユーザーは不満を漏らし始めます。
ソーシャルゲームでいう所の、ネガティブキャンペーンです。

ファンであるからこそ、ゲームを利用し課金をしてくれます。
しかし、習慣化してしまえばしてしまうほど、課金した際に求めるものから
刺激が感じられなくなってしまうのです。

また、課金に関しても
課金すればするほど確率曲線に準じてしまう部分があり、
奇跡的な成功や、連続して課金してしまう中毒性から離れてしまいます。
その点から、強制されてゲームをしている様な感覚に陥ってしまいます。

結果、利用ユーザーからはゲームへのネガティブキャンペーンが始まってしまうのです。

3)刺激のメリット
刺激を高めると、ユーザーは行動を増やします。
ソーシャルゲームでいう所の、ゲームアップデートです。

ゲームにおける実施できる事の追加というのは、大いにユーザーを刺激します。
通常のミッション、もしくはイベント戦 この2つを軸に展開するコンテンツが
殆どだと思われます。

それに対して、コレクション性やストーリーを追加したり
はたまたミニゲームや対人戦を追加すると言った事は
よりユーザーに出来る事の選択肢を増やします。

選択しが増え、ユーザーがそれに対して行動をつづければ、
結果利用時間が増え、課金量も増えると言えます。

4)刺激のデメリット
刺激が多すぎると、刺激が多い事を習慣化してしまうと言えます。
ソーシャルゲームでいう所の、ゲームバランスの崩壊です。

刺激的なキャラクターが多ければ、それに慣れてしまい
旧来のキャラクターの削除や非活性化につながります。

結果、旧来のキャラクターに投資していた人々は
投資しても、新キャラクターによって使えなくなってしまう事を
無意識化で学習し、課金率が減少します。

それを打破する為に、もっと強力なキャラクターを提供すれば
より旧ユーザーの課金が減る曲線をたどります。

■まとめ

いかがだったでしょうか?
自社サービスにおいて、習慣と刺激
両方にバランスが取れていましたでしょうか。

維持フェイズにおいては、習慣化を
新規獲得フェイズにおいては、刺激を増やしましょう。

■PLUS(1)

刺激ばかりが多い場合には、

【サービス改善】「秋だけどあえてダイエット」太りきったサービスを改善する黄金7箇条

をおすすめ致します。

【サービス改善】「秋だけどあえてダイエット」太りきったサービスを改善する黄金7箇条

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■はじめに

芸術の秋・紅葉の秋・そして食欲の秋。

機能追加といういつまでも続く欲望に負け、太りに太ったサービス。

万能ツールではあるものの、多機能であればある程、 サービスは機能不全を引き起こしやすいと言われています。

使いたい機能が分かりにくく、新規ユーザーは理解しにくい。 既存ユーザーは、目新しさを感じられず目減りしていく。

起死回生のリニューアルオープンは、まさかの大失敗となり ユーザーは減少する事に、なーんて事はよくある話です。 特に代替サービスがある場合には、本当に一瞬でサービスの終焉を 迎えてしまう可能性もあると言えます。

さて、リニューアルのノウハウの前に必要と言われているのは、 サービスのダイエットです。 愛着のある機能やサブサービスの削除というのは、 ダイエット以上に身を切る辛さがあります。

しかし、事業の集中の為にも選択し行動する事が重要です。 サービスを改善の為の黄金7箇条を学んでいきましょう。

■7つの方法

1:機能の抽出は網羅的に

機能の抽出は全体的に、網羅性を持って行う事が必要です。
コンサルティング的なワードでMECEという視点がありますが

重複なく・漏れなく実施する事が必要です。

個別機能を深く掘り下げれば機能数は増えますが、
検討量が多くなります。

機能を大枠で考えれば機能数が減り検討事項は少なくなりますが
本当に削らなければいけない機能が抽象度によって隠れてしまいます。

この点は、サービスの成熟度により深度が変わる分だと思いますので、
自社サービスに合う検討を実施して下さい。

2:削除するときには一気に実施する

チマチマと削除すると、その都度ユーザーは新たな使い方を学習しなければならず
疲弊すると言えます。
そのたびに社内の稟議を通して、機能を削除した事による影響を計測しなければいけません。
機能追加以上の作業が発生する事は間違いありません。

もちろん、一気に削除すれば学習の壁が大きくなり、一気に疲弊する面もあります。
しかし、一覧網羅的に変わった事をお知らせする事よりも
都度機能削除内容についてお知らせする方が難しいのは言わずもがなでしょう。

3:経営・開発担当者への根回しの徹底

サービス終了に伴い良く起きるのは社内的なトラブルです。
サービスの内情が見えるからこそ、批判的になりがちです。
また、削除してから指摘を受けて再度リカバリーさせるなんていう
事例も多々発生します。

そうした状況を避ける為にも、経営・開発両方の側面から
根回しを実施し、周知と納得を得る事が重要です。

4:ユーザーヒアリングを徹底的に

削除してからリカバリーする事程、面倒で無駄な事はありません。
そうしたトラブルを避けるために必須なのが、ユーザーヒアリングです。
顧客が機能として使用率が低い=使っていない機能ではありません。
逆に使われていない機能は、どういう側面で活用されているのか?

実際にユーザーにアンケートを取ったりインタビューをしてみましょう。

使われていない機能が、実は知られていなかっただけだったという事もあったりします。
コストをかけなくても、アンケートツールやソーシャル上でのヒアリング等
色々な手はずがあります。

5:代替サービスのご紹介

今までのサービスを削除すると言う事は、
そのユーザーが他サービスに行く事を認めると言う事です。
ユーザー視点に立てば、使えなくなるという事で不満点があり
代替サービスを探すというのに不便を感じるわけです。

ユーザーからすれば、提供サービスへ嫌悪感すら覚える事でしょう。
そうした時にはライバルであるという事を一旦棚におき、ライバルに顧客を提供しましょう。
また、流入支援という事で交渉できる部分もあると言われます。
ダイエットして利得を得ることもできるのです。
是非とも検討しましょう。

6:サービス削除のタイミング

サービス削除のタイミングはブーイングが出る部分です。
ソーシャルの中では、忌憚のないご意見が飛び交い、
サービス利用者は今後に不安を感じて、多少なりともユーザー減少の可能性も避けられません。

それを、新サービス提案によってオブラートに包み込むというのは戦略的に妥当と言えます。
サービス追加が少ない時期であれば、ユーザー利用が少ない時間帯などでのアナウンスを
心がけましょう。

7:改善において完成形はない

最後の1カ条は、サービスに完成はないという事です。
削除する事によって次に何に注力するのか?という事や
新たなゴール設定を行うという事等を考える必要性があります。

カド番の機能を作り、てこ入れをしつつ
次の削除する機能について焦点を当てましょう。

■最後に

いかがでしょうか? サービス担当者であれば、取捨選択を常に考えなければいけません。

太り太ったサービスに大ナタを振るうのには、上記7カ条を必ず目を通すことを お勧めいたします。

【グロースハック図書館】書籍「グロースハッカー」を読んで

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■はじめに

グロースハック図書館シリーズ、前々回、前回に続く3冊目です。

今までの記事はこちら:
第1回「世界一即戦力な男」
第2回「ハマるしかけ」

本書はグロースハッカーの読むべき最初の一冊、といった趣の書籍です。

具体的な事例について豊富に記されているわけではありませんが、基本的なグロースハッカーの定義、そしてマインドセットについて書かれています。

グロースハッカーのみなさまにおいては、日夜グロースハックに励むあまり、目の前の問題を解決することに追われてしまってはいませんか。

初心忘るるべからず。筆者はこの「グロースハッカー」を読んで、グロースハックの本質とは何なのか、改めて考えさせられました。

■グロースハックとは、自ら進化するシステムを作り出すことである

まずは本書に書かれている、グロースハックの定義を引用してみましょう。

グロースハッカーは、伝統的なマーケティング戦略を放棄し、検証•追跡•測定が可能なものだけを用いる。
彼らの武器は、CMや宣伝や資金ではなく、電子メール、PPC(ペイパークリック)、ブログ、プラットフォームAPI(アプリケーション•プログラミング•インターフェース)だ。古い世代のマーケターが”ブランディング”や”マインドシェア”などの漠然としたものを追い回している間、グロースハッカーはひたすらユーザーと成長とを追跡する。そして、戦略が当たれば、ユーザーがユーザーを引き込む連鎖反応が生まれる。グロースハッカーとは、自立し、自己増殖する成長マシンの発明者であり、オペレーターであり、整備士だ。この成長マシンが新興企業を成功に導くのだ。

今、グロースハックジャパンをご覧のみなさまなら、なるほどその通りだと納得する定義だと思います。

この書籍全体がこの定義に沿って書かれていますし、全体のまとめとして素晴らしい文章です。

しかし同時に、いささか具体的な用語が多く、掴みにくい定義にも感じられます。

今までのマーケティングと、グロースハックは、一言で言うと、何が決定的に違うのでしょうか。

グロースハックのもたらした決定的な革新とはなんだったのでしょうか。

■想像力の限界を超える方法

この「グロースハッカー」を読んで、グロースハックの本質とは「人間の想像力を超えることができる」ことにあるのではないかと考えました。

従来のマーケティングは、主に個人の想像力に依っていました。

数値を分析することはあれど、その解釈の結果打ち出す施作は、結局のところマーケティング担当者の発想できる以上のものにはなり得ません。

当然、個人の想像力の限界が、そのままマーケティングの限界に繋がってしまいます。

一部のカリスママーケッターだけが、その並外れて優れた直感で大きな結果を出してきた、とも言えるでしょう。

しかしグロースハックはそうではありません。とにかく様々な施作を試み、実験を繰り返し,最もユーザーの反応が良かった施作を組み合わせていくという手法です。

グロースハッカーに必要なのは、直感や想像力のようなアーティスティックな才能ではありません。

科学的に結果に向き合うサイエンティストとしての眼差しです。

結果として、想像もつかないような最適な効果を上げる施作の組み合わせに辿り着くことができるのは、他でもないグロースハッカーなのです。

そうした意味で、グロースハックとは、人間の想像力の限界を超える手法と言えるのではないでしょうか。

■おわりに

グロースハックは生物の進化に似ています。この地球では、多種多様な形態を持った生物がひしめいています。

その中には、人間の想像を絶するような姿の生物も数多く存在しています。

しかしどんな生物も、それが生き延びている以上、何らかの形で環境に対して、長い試行錯誤の中で最適化されているのです。

同じように、今まで考えもしなかったような最適な施作を生み出すことができるグロースハックという手法は、20世紀の人類が到達できなかった、新しい地平を切り開いているのかもしれません。

グロースハックの基礎に立ち返ると同時に、「グロースハックとは何なのか」という問いは、意外に哲学的な問いに繋がっているのかもしれない、と考えさせられた一冊でした。