―アマナグループのコンテンツ制作に対する考え方や取り組みについて教えてください。
まず、アマナを中心とした10数社のグループ会社で構成される「アマナグループ」は、国内においては日本最大級のコンテンツソリューション・カンパニーだと私たちは自負しています。企業のコミュニケーションに必要なあらゆるコンテンツを、ビジュアル1枚から映像、イベントにいたるまで制作するカンパニーです。今年で40周年を迎えましたが、コンテンツという領域においてはいろいろなブランドさんとお取引させていただいています。
40年間の大半においては、コンテンツを作ることが主な生業だったのですが、デジタル情報化社会による情報の大きな洪水ができて、作っただけでは届かなくなった昨今、「どうやって届けていくのか」の視点も求められるようになりました。その結果、様々なコンテンツを届けるプラットフォームを活用して、ディストリビューション領域に対してもさまざまな施策をおこなうようになりました。

―ディストリビューションを考える上で大切にしていることは?
「CONTENT is KING, DISTRIBUTION is QUEEN.」という北米で生まれた言葉があり、日本でもその概念が少しずつ定着してきていますが、コンテンツとディストリビューションにおける本当の意味での両視点を持つことが重要という考え方です。デジタルコミュニケーションの領域では「DISTRIBUTION is KING」な視点で対話が進み、どうしても数字や効率主導主義に陥りがちです。しかし、本来、人の心を動かすのはコンテンツそのものであり、その視点抜きではパフォーマンスは最大化されません。そしてそれは、中長期的にビジネスインパクトへ大きな影響をもたらします。クライアントさんもそのことを理解されているので、コンテンツを生業にしてきたアマナグループがディストリビューション領域まで手がけることは全体最適の視点においても反応がよく、我々の事業の中でもその領域が伸びてきているという現実があります。
先程、様々なコンテンツを届けるプラットフォームを活用しているとお伝えしましたが、その中でも非常に相性が良いと感じるのが、レコメンデーションプラットフォームです。
当社では、記事コンテンツ制作や企業のオウンドメディア支援案件も多いので、レコメンデーションという届け方はかなり相性がいいんです。ソリューションベンダーさん数社とおつきあいさせていただいています。
―複数社ご利用されている理由を教えてください。
それぞれの特徴が違うので、実際の案件において複数社を活用してみることでパフォーマンスの横比較をし、案件特性と各プラットフォームとの相性を見ているのですが、その結果を見ると、総じてアウトブレインはいい数字を出しています。

これは複数のレコメンデーションを使った某案件の横比較のグラフで、折れ線が読了率、棒グラフが平均滞在時間を表しているのですが、アウトブレインはその両方ともがすぐれていることがわかります。比較をとったのは記事コンテンツで、目的はブランディング。そのブランドに共感してもらうことが目的だったので、記事をしっかり読んでくれることがとても大切になります。滞在時間が長いということは、興味をもってじっくり読んでくれているということ。つまり、エンゲージしているということです。
我々はこのエンゲージメントに非常に注目しています。獲得とリーチは、データとしては非常にわかりやすいですが、益々コモディティ化が進む現代において選ばれ続けるためには、より消費者との深いコミュニケーションで共感や理解を図ることが重要となります。
―どんなところに、プラットフォームごとの特徴の差を感じますか。
各社の特徴に差が出てくる要因は3つあると思っています。ひとつめは「メディアのネットワークの質とバラエティ」、2つめは「届けるためのアルゴリズム」、そして3つめは「プラットフォームを運営する方々のフィロソフィ」です。アウトブレインに関して言うと、メディアネットワークの面においてはブランドセーフティが担保される安心・安全なプレミアムメディアが構築されている印象があります。要は、「こういう媒体には出したくないな」というものに掲載されてしまうことがない。アルゴリズムに関しては、検証の結果として、届けたかったユーザーに届いていることが一目瞭然です。
そしてフィロソフィに関しては、アウトブレインがコンテンツの質を重視していることは日々のコミュニケーションの中でも伝わってきます。たとえば、厳しい審査基準を設けて、質の悪いコンテンツやユーザーに誤解を与える情報などに目を光らせていますし、ガイドライン基準に則っていないコンテンツやサムネイル、タイトルは審査に通していません。同様に質を追い求めてきたアマナグループとしても、私たちが作る質にこだわるコンテンツは、質の高い届け方でなければ、正しいコミュニケーションにならない。だからこそ、アウトブレイン自体がコンテンツの質を理解してくれていることに安心感がありますし、この3つの視点において僕らと親和性が高いアウトブレインには高い信頼を寄せています。
とはいえ、訴求内容や届けたい人、目的に応じて、他のソリューションが相性が良い時もあります。ですので、基本的にはアウトブレインを推奨しながらも複数のレコメンドソリューションを使っています。複数のプラットフォームを使ってパフォーマンスの横比較をしながら、結果に応じて予算をアロケーションしていき、ディストリビューション最適化につなげています。
―アマナグループがコンテンツを制作する上で大切にしていることを教えてください。
「質」ですね。“安かろう悪かろう”であってはならないと思っています。インターネット上での届け方の手段が溢れ、そのこと自体に注目が集まったため、CPMやCPC、CPAはどうかといった数字や効率主導主義になり、コンテンツの質が脇に置かれた印象があります。ですが、「CONTENT is KING, DISTRIBUTION is QUEEN.」は、コンテンツとディストリビューションの両方が存在して(キングとクイーンがそろって)、初めてひとつの“王国”を繁栄していけるもの。ディストリビューション最適またはコンテンツ最適だけ考えるのではなく、俯瞰で見て全体最適をはかっていくことが本来必要なんです。
もちろん、数字を見ながら最適化していくことも大事ですが、時にはそれを大きく超えるようなことがあります。それはなにかというと、クリエイティブの変数。そのため、ディストリビューション最適化だけではなく、クリエイティブの視点をどんどんいれていくことにより、数字だけを見ていては成し得ない大きなブレイクスルーを追求したい。クリエイティブの変数を活かしていきたいと思っています。
―コンテンツ制作において今後どういうことが大切になってくると思いますか。
やはり「質」ですね。これからさらに消費者の目は肥えてきますし、もっとコモディティ化は進むと思うので、そういった意味でも質は大切。ディストリビューションのプラットフォームの価値を最大化させるのは、コンテンツの質ですし、さらにいうならデジタルマーケティング全体のパフォーマンスも最大化させると思っているので、数字では語れない変数の力を信じてデジタルマーケティングをおこなっていきたいですね。
佐藤 勇太氏
株式会社アマナ / 執行役員
株式会社アマナデザイン / 取締役
CEO
株式会社アマナに入社後、広告制作プロデューサーとしてグラフィック、映像、WEB、イベントなど、企業のコミュニケーションに必要な幅広い分野でのコンテンツ制作事業に従事。現在は、国内外の様々なデジタルマーケティングプラットフォーマーとの国内連携を推進しながら、アマナグループにおけるデジタルマーケティング事業を担当。
–現在、日本のコンテンツマーケティングにおけるトレンドについて、どのようにお考えですか。
いくつかのトレンドがありますが、まず一つはブランドセーフティ。欧米諸国では3年くらい前からよく聞かれていましたが、日本でも外資系企業を筆頭に、多くの企業でブランドセーフに対する意識の高まりが見られるようになりました。
また、これまではどちらかというと、より多くのユーザーに対してどうやってリーチするかという点に主眼が置かれてきましたが、今後はエンゲージメント、つまり、どれだけ深くユーザーとコミュニケーションを図れるかという点が重要視されるようになるのでは、と考えています。今後、通信網が発展し、モバイルでできることがますます増えれば、よりインタラクティブ性の高いコミュニケーションの手法が一般的になるのではないでしょうか。

–そうしたトレンドの中、御社の取り組みについて教えてください。
当社ではインタラクティブ性の高い動画コンテンツに力を入れており、中でも、ユーザー自らが動画を選択して視聴できる新しい配信サービス「FOCUS」は、ユーザーに「スキップされる動画」ではなく「選んでもらう動画」として、広告主の皆様にご好評をいただいています。また、広告のクリエイティブな部分に再度目を向けなおし、「どのようなコンテンツがユーザーに深く刺さるか」を考察。配信の手法や広告のフォーマットももちろん大事ですが、それ以前の課題として、「ユーザーに刺さるコンテンツとは一体何か」という、いわば、広告の本質的なテーマに今後、デジタルマーケティングは回帰していくのではないかと見込んでいます。
では一体、どのようなデータがユーザーに「刺さる」のか? これを考えるには、データが大きく貢献するでしょう。つまり、インタレストデータを読み解くことでより確度の高いコンテンツを制作する。そして、どういったコンテンツがエンゲージメントに効いたのかアトリビューションを解析する。これらによって高速に PDCAを回し、よりユーザーに「刺さる」コンテンツを制作することができるでしょう。
–一般に、マーケティング先進国である欧米に比べ、日本は3年程度遅れていると言われています。
確かに、そのような傾向もあるでしょう。先ほど述べたブランドセーフティについても、欧米ではすでにその概念自体が標準化していますし、デジタル広告を含めた運用自体もインハウス化されていて、リアルタイムに運用型広告を最適化したり、コスト効率を改善したり、透明性を担保したりしています。それに比べて、日本ではまだデジタル広告のインハウス化が進んでおらず、人員的にも体制的にも改善の余地がある。しかしその一方で、一部のアーリーアダプターたちは欧米と同様、もしくは、それよりも早い取り組みを見せています。彼らが最も進化している分野こそデータの活用であり、その分野に限って言えば、この1、2年の進化は非常に目覚しいと言えるでしょう。そういう意味では、日本におけるデジタルマーケティングは二極化が進んでおり、今後も益々この傾向が強くなるのではないでしょうか。
–そうした中で「刺さるコンテンツ」を作るための着眼点としては、どのようなものがありますか。
私は、“3つのM”が関係していると考えています。一つ目は、「Mode(モード)」。たとえば、ユーザーが積極的にコンテンツを探しに行き、自らの意志で広告にアクセスすれば、当然、そのコンテンツはユーザーにとって深く刺さるのものになるでしょう。受動的に眺めるだけの広告よりも、その効果は明白です。このように、ユーザーのモードに合わせたコンテンツは、エンゲージメントに深く影響しています。
二つ目は、「Moment(モーメント)」。コンテンツを作る際にはペルソナを設計します。もちろん、ペルソナはとても重要な役割を果たしますが、もっと細かく見れば、同じ人物でも朝と夜ではペルソナが変わります。つまり、今までのような1 format, 1 messageではカバー仕切ることができないとういこと。今後は様々なモーメントに合わせるため、コンテンツはより多くのバラエティを持つことが求められるようになるでしょう。
三つ目は、「Measurement(メジャーメント)」。コンテンツマーケティングの成否は、KPIがしっかり設定され、それを実際にメジャーメントできるかという点が大きく関係しています。トレンドの移り変わりを的確に捉えながら、コンテンツをリアルに改善していくことが、刺さるコンテンツ作りに必要な3つ目の要素と言えるでしょう。
–メジャーメントについては近年、ツールの進化が目立っています。
当社のパートナー企業であり、アトリビューションサービスを提供するTRENDEMONの登場に示されるように、ここ2〜3年でマーケターがデータ分析を行うのに最適な環境が整いつつあります。コンテンツの8割はカスタマージャーニーに貢献していないという調査結果もあり、データに基づいて問題点を改善すれば広告の雲鷹効率は単純計算で5倍に上がります。
しかし、データの読み方には何通りもあるということも忘れてはなりません。つまりどれだけ計測ツールが進化しようとも、データを読み解き、対策を講じるのは人間である以上、どうデータを読み解くかというのはマーケターや編集者のカンや経験に頼る部分も少なくなく、そうした経験値は今後ますます重要になってくるでしょう。現在、データ分析は個の力に依存する部分が目立ちますが、ある企業はデータ分析のプログラムを自社で開発したりするなど、かなり意識の高い試みを見せています。その一方、まだ的確なKPIを設定せずに広告運用を行っている企業も多く、今後もこうした二極化はますます進むだろうと見込んでいます。
–日本におけるデジタルマーケティングは今後、さらに二極化が進むということですが、これを改善するには?
日本の企業はそもそもの文化として、縦割りの事業部制が浸透しています。しかし企業によっては、ECサイトも運営すれば、楽天やAmazonでも商品を扱う、また企業サイトだけでなく、オウンドメディアやマイクロサイトも展開するなど、ユーザーとの接点は非常に多岐に渡ります。そうした中でメディアごとに担当者を分ける従来の体制では、全体を俯瞰的にみて戦略を講じることはほぼ不可能。つまりCMOが全体を俯瞰し、マーケティングの戦略を横串で繋げていき、企業全体で最適化を測っていくことが必要であり、体制そのものを根本的に変革していく必要があるのではないかと考えています。
–そうした中で、今後、必要とされる人材とは?
デジタルマーケティングの領域は、現在、統廃合が進んでいます。どんどん新しいテクノロジーも開発されていますし、プロダクトのリリースも相次いでいます。各社が新しいツールを次々と提供する中では、適切なツールを、適切に使える人材が必要。決して新しい手法を取り入れ、先駆的な取り組みをすることがゴールではなく、定めたゴールに対して適切なツールをどう組み合わせて使っていくか、全体設計の視点においてツールを選択する視点がまず必要となるでしょう。
しかしその一方で、最終的にユーザーのエンゲージメントを確保するという点では、より、クリエイティブの領域が重要性を増すだろうと考えています。今まではどちらかというと、デジタルマーケティングの領域では、計算や論理的思考を司る左脳が重要とされてきましたが、今後は、右脳的な創造性が必要になるのではないでしょうか。このツールを使って、このようにファネルを設計して、こうやってリタゲして…とどれだけ完璧に設計しても、そこを流れるコンテンツが良いものでなければ、ユーザーには刺さりません。どんなに高級なレストランで、インテリアやサービスが素晴らしかったとしても、そこで提供される料理がいまいちであれば、お客は満足しませんよね。それと同じ。つまり、デジタルマーケティングの領域では、よりクリエイティブ性が必要とされ、ユーザー経験の価値を高めることが重要視されるのではないでしょうか。

興味をもったユーザーのみが
主体的に視聴する。
–そうした中で、サービスやプロダクトの方向性についてはどのようにお考えですか。
先ほど申し上げた3つのMのうち、モードとモーメントに関しては、アウトブレインが誕生以来、主軸に据えている分野であり、それらをコミュニケーション起点としてそもそものサービスが設計されています。そうした中で、今後、より重要になると捉えているのがメジャーメントです。つまり、我々が持っているユーザーのインタレストデータに、たとえばクライアントが持っているファーストパーティのデータや、パブリックなサードパーティのデータなどを結合させ、クライアントにとってもっと効果的なマーケティングを考えていくことが今後、ますます求められていくでしょう。

–それによって、ユーザーの行動変容はどのように起こりますか。
適切なモードやモーメントはエンゲージメントの深さにつながります。それに加え、メジャーメントによって客観的な視点を加え、広告精度を上げていくことで、ユーザーのエンゲージメントは深まるだろうと考えています。
しかし、矛盾するように思えるかもしれませんが、データはあくまでも過去の履歴でしかありません。つまり、未来を予測する領域にはまだ到達していないのです。たとえば、私がこれまでネパールの情報に触れておらず、現時点で興味を持っていないとはいっても、私がネパールを好きではないかというと、決してそうではありません。ネパールの広告を当てることによって、新たな興味を喚起し、行動変容につなげる可能性もあるのです。
私たちは、広告にはディスカバリーの要素が必要だと考えています。つまり、ユーザーの興味関心に沿って、「その人に好まれるだろうな」という情報を提示することはもちろん大事ですが、その一方で、遊びの要素も必要であり、新たな世界を示してあげることも大切だと思うのです。自分の世界観に合致する広告ばかりが提示されれば、はじめはユーザーの関心を誘っても、やがて広告自体が飽きられてしまうでしょう。そこではフレッシュなお勧めがないからです。
もともとアウトブレインは、「雑誌を読んでいるときの、次のページをめくるときの高揚感や、次にどんなコンテンツと出会うかわからない不確かさ」といったものにインスパイアされ、設立されたという経緯もあります。これまではデジタルマーケティングの精度を高めることに注力し、ユーザーが好みそうなコンテンツの配信に意識が向けられてきましたが、現在はその揺り戻しが起こっており、「広告をみる楽しさ」という原点が改めて見直されているのではないかと思います。たとえていうなら、情報のセレクトショップとなるでしょうか。どんなに優れたショップでも、品物を一つしか持っていなければすぐにユーザーに飽きられてしまうでしょう。しかし、「あなたはこういう商品が好きですよね、でも、こういうものもありますよ」と新しい世界を示してあげる。そうすることでユーザーの広告体験は価値が高まり、エンゲージメントにも貢献するのではないかと思うのです。
–“情報のセレクトショップ”は、オンラインだけでなく、オフラインにも拡大していくのでしょうか。
当然、そうなるでしょう。今、クライアントと話していると、イベント重視の傾向が出ているように感じます。たとえば、自社の商品を愛用しているユーザーの中から影響力のある人たちを招待して、リアルなイベントを開催する、そしてその様子をSNSで拡散するといったインフルエンサーマーケティングも、ますます重要視されています。デジタルマーケティングというと、数値やデータだけで完結すると勘違いされてしまいがちなのですが、その先には「人」が存在しています。その人の感情や行動を細やかに読み取り、マーケティングに還元していくという、一見時代に逆行していくかのような施策が、今後のデジタルマーケティングにおいては価値が見直され、ますます求められていくのではないかと考えています。
嶋瀬 宏氏
アウトブレインジャパン株式会社
代表取締役社長
2001年三菱商事株式会社入社。国内外における新規プロジェクト開発などを担当。同社退職後、新規事業のインキュベーション・コンサルティングを行う株式会社ステラ・ホールディングスを設立。2013年11月より世界最大級のディスカバリー・プラットフォームを提供するアウトブレイン ジャパン株式会社の社長に就任。『適切なユーザーに適切なモーメントで』コンテンツを届ける同社のプラットフォームを通して、オンラインパブリッシャーとコンテンツマーケティングを展開するさまざまな企業をサポートている。
–日本で正式にローンチしたのは2018年7月。現在の状況はいかがですか。
2014年にイスラエルで設立され、日本で正式にサービスを開始したのが2018年7月。お客様の多くがオウンドメディアを運営し、コンテンツマーケティングに注力されている企業の方達です。日本で正式にローンチしてからまだ半年ほどですが、お陰様で既に国内では大手企業を中心に延べ50社近くのお客様にご導入頂いています。
その背景にあるのが、当社のサービスの独自性と利便性です。ご存知の通り、従来のWEB計測分析ツールにおいては国内でも既に複数あります。いずれも素晴らしいツールですが、そういった計測ツールのほとんどが広告のROIを可視化するものであり、デジタル上の「コンテンツ」にスポットを当てた計測ツールがこれまでほとんど見当たらなかったのも事実だと思います。そういった現状に対して、弊社では誰でも簡単に「コンテンツがビジネスゴールに与えているインパクト」を分析することができるようなダッシュボードをご提供しています。

–御社のサービス「TRENDEMON」では広範囲に渡ってカスタマー・ジャーニーを可視化することで、 どのようなコンテンツがビジネスゴールに貢献しているのか把握することができるのですね。
現在、デジタル上でのカスタマー・ジャーニーはますます複雑になり、長期化しています。その背景として、広告に反応しづらくなっている方が増えているということも挙げられます。ニールセンの調査によると現在の生活者は「購買行動を行うまで平均で11個以上のコンテンツを消費する」というデータがあります。そこでTRENDEMONではワンタグをご設置頂くだけでクロスドメインかつクロスデバイスでカスタマージャーニーを一気通貫で分析できるようになっています。しかしながら、ユーザーのデジタル上でのカスタマージャーニーのデータ量は膨大な大きさになります。ただでさえ忙しいコンテンツマーケティングのご担当者様が集計や分析に多くの時間を割くことは現実的ではありません。
そのため、TRENDEMONは予め膨大なジャーニーデータからご担当者様が実際にすぐ、改善アクションに移れるようなインサイトを複数ダッシュボード上でご提供しています。
–料金体系についてはいかがですか。
通常、SaaS系のプロダクトは、オプションで価格をアドオンしていくケースがほとんどですが、当社の場合は金額体系を可能な限りシンプルにしようと 考え、PVによる従量課金制をとったサブスクリプション型の年間契約が基本となっています。
まだ立ち上げフェーズという状況もありますが、現時点ではご導入頂いた企業様には必ずオンボーディングから分析、レポーティングなど含めカスタマーサクセスチームがサポートさせて頂いております。弊社の理念として、TRENDEMONを使って頂くことが目的ではなく、責任を持ってお客様のビジネスを一緒にグロースさせて頂くことが弊社の最終的な目標にあります。
–グローバル企業と比べて、日本企業ならではビジネス特性もあるのではと思います。
確かに国内ではディテールオリエンテッドな気質が あるように感じています。グローバルの場合、 PLAN(計画)してからアクションするまでのスピードが早いかと思うのですが、国内ではディテール部分をしっかりと詰めてからでないとなかなかアクションに移れない光景をよく目にします。どちらが良いということではないのですが、逆に日本市場のニーズを細かく、正確にキャッチアップし、プロダクトに反映しローカライズすることに成功すれば、間違いなくどこの国でも戦えるプロダクトになっていると、弊社では本国の開発チーム含めて共通の認識としています。

–今後のプロダクトの方向性については、どのような展望をお持ちですか。
現在、弊社のプロダクトは計測ツールという位置づけではありますが、パートナー企業であるMAやCDPを提供する企業様とのAPI、データ連携もすでに行っています。たとえば、弊社のアトリビューションスコアを元にしてメディア内部の回遊性を上げる、コンテンツのオートレコメンド表示機能であるPERSONALIZATIONや、店舗での購買データから顧客デモグラ情報をベースにしたコンテンツ分析なども順次リリース予定となっています。
CDPを提供するパートナー企業様との連携では、年代や性別などのデモグラ情報で見た時に店舗での購買者がオフラインでの購入を決断するまでにどのようなコンテンツを多く消費する傾向にあるのかといった非常に興味深いインサイト事例が出てきています。
更に、現状のWEB施策の大半がCPAベースで施策のパフォーマンスが評価されがちですが、実際にはCPAだけでなく、ブランドに対して興味を持ってもらうという”入り口”としての要素もきちんと評価されるべきだと思っています。
非常に基本的なことではありますが、広告ごとに役割が存在し、例えば、読み物系のコンテンツを通してブランドに対して興味や親近感、新たな気付きなどを感じてもらったりする中で、態度変容や能動的な行動を促されるようなモーメントが必ずカスタマージャーニー上のどこかで発生します。その重要なモーメントを確実に捉える為に弊社ではATTENTIVE(高頻度接触者)オーディエンスという指標をリリース致しました。ATTENTIVEオーディエンスとは、「過去30日間で2回以上来訪し、尚且3つ以上のコンテンツを読了している」という定義のもとコンテンツに対して通常の来訪ユーザーよりも極めて高いエンゲージメントをもったユーザーを「見込み顧客」として個別にダッシュボード上でインサイト化しています。自社の調査の結果、このATTENTIVEオーディエンスは通常の来訪ユーザーと比較して3倍近くのCVRがあるという実績も出てきております。
–現在、お客様の中で、コンテンツマーケティングに取り組んでいる企業の比率はどれくらいですか。
グローバルでは多くの企業がコンテンツマーケティングを展開していますが、日本ではまだ数えるくらいというのが現状です。一般に、アメリカのマーケティングが日本へ到達するのに3年かかると言われていますが、その一方、アメリカよりも緻密で高度な分析を行なっているお客様も多いので、一概にアメリカに比べて遅れているとは言えないと思います。
とはいえ、現実としてコンテンツ制作をする上で依然としてライターさんの属人的な勘や経験値といったものでしかコンテンツの制作、量産化ができていないお客様が国内では多くいるのではないかとも感じています。また、自社の調査によれば、オウンド・メディアのコンテンツのうち、コンバージョンに寄与しているのはわずか15%だったという非常にセンセーショナルなデータもあります。
国内では特にラストタッチにおける広告のROIにはセンシティブな方が多い一方で、興味深いことに多くの予算と人的リソースも投下されているであろう大切な「コンテンツ」のROIの可視化に取り組もうとしている企業は思った以上に少ないと率直に感じています。
大きな要因のひとつとしては、冒頭でお話した通り、これまでコンテンツの価値を可視化しようとした時に適切な分析ツールが存在しなかったことが考えられます。
コンテンツのROIを明らかにすることができれば、さらに国内でのコンテンツマーケティングへの成長スピードは加速すると信じています。
–コンテンツマーケティングがますます活発になると予想される日本のデジタルマーケティング市場において、今後は、どのような人材が求められると思いますか。
私のような者が言えた立場ではまだないのですが(笑)、自分へのメッセージとしてもあえて言うとすると、 弊社はカスタマーサクセスというポジションを非常に重視しています。その背景として、弊社のようなSaaS系ソフトウェアのプロダクトのほとんどがクラウドベースのプロダクトということもあり、お客様が従来のような最初の契約で大金を支払ってソフトウェア自体を「所有」する必要がなくなってきています。そうした状況の中で一定の契約期間の中で「利用する」ということに重きをおいた、サブスクリプション型のビジネスが現在多く広まっています。
そういったサブスクリプションの世界では、常にお客様の満足度を上げ続ける必要が出てきます。その中核の役割を果たすのが「カスタマーサクセス」というポジションです。文字通りお客様のビジネスを成功に導くことが最終ゴールのため、お客様視点で物事を考えることが求められます。ですが、とりわけ弊社のような立ち上げフェーズという状況ですとどうしても気がつくと自分も導入社数など、いかにプロダクトのシェアを伸ばすかということばかりに気を取られ、近視眼になってしまう時があります。
話が脱線しましたが、そういった状況の中でも、そこは焦らず目の前のお客様の視点で物事を考えることができ、適切なアクションが取れるような人がより一層求められてくると感じています。
自分自身としては上記の役割を果たすにはまだまだ至らないところだらけではありますが、現在は本国の優秀なチームの方達のサポートや国内のコンテンツマーケティングを取り組まれている先輩方からのサポート頂きながら少しでもカスタマーサクセスの役割を果たせるような人材になりたいと思います。
–カスタマーサクセスはサブスクリプション型プロダクトに特化するサービスとも言えそうですが、そうしたサービスを受ける企業側にとっては、ビジネスを成長させるためにどのような姿勢が必要でしょうか。
自戒を込めて言うと、新しい試みに対して進んで挑戦し、最新の事例を作ることに前のめりで取り組めるように、失敗を恐れずにリスクを取り続けるマインドを常に持って日々の業務を行っていきたいと思っています。実際、当社のお客様にもそうした方が多く、私自身、TRENDEMONを新規のお客様にご説明するにあたり、 今までにない概念を持った特殊なプロダクトであるため、当初は提案するのが大変だろうと予想していたんです。しかし実際は、 「こういうプロダクトを待っていたんですよ!」と好意的に受け止めてくださる方も多く、そうしたお客様はサービスの活用によって、ますます業績を伸ばしていらっしゃいます。当社としても、これからますます人員を拡充してサービスを充実させ、 当社のミッションでもある「コンテンツ計測の世界標準」になるべく、コンテンツマーケティングを通してお客様のビジネスゴールに徹底的にコミットしていきたいと思っています。
嶋添 心悟氏
TRENDEMON JAPAN 株式会社
カスタマーサクセスマネジャー
2013年新卒として SEPTENI JAPANに入社。約3年間ソーシャルメディアの立ち上げメンバーとして従事し、Facebook、Twitterのコンサルティングを担当。2016年には 博報堂DY Digitalにて企業のLINE公式アカウントのコンサルティングに従事。2018年からはTRENDEMON JAPANにてCustomer Success Managerとして日本オフィスの創設メンバーとしてビジネス開発に従事している。