TRENDEMONというユニークな名前のもと、日本でサービスを開始したのが2018年夏。 「コンテンツの価値」を誰でも簡単に分かりやすく可視化できるという画期的なアトリビューション分析ツールで、現在、多くの企業のデジタルマーケティングに貢献している。一般に、“Content is king, distribution is queen”と言われるが、それらに続く第3の役割を担うべく、イスラエル発のコンテンツアトリビューション解析ツールTRENDEMONは、今後、日本のデジタルマーケティングをどのように変えるのか。TRENDEMON JAPANでカスタマーサクセスマネージャーを務める嶋添心悟氏にお話をうかがった。

“Content is king, distribution is queen”に続く、第3の役割として

–日本で正式にローンチしたのは2018年7月。現在の状況はいかがですか。

2014年にイスラエルで設立され、日本で正式にサービスを開始したのが2018年7月。お客様の多くがオウンドメディアを運営し、コンテンツマーケティングに注力されている企業の方達です。日本で正式にローンチしてからまだ半年ほどですが、お陰様で既に国内では大手企業を中心に延べ50社近くのお客様にご導入頂いています。
 その背景にあるのが、当社のサービスの独自性と利便性です。ご存知の通り、従来のWEB計測分析ツールにおいては国内でも既に複数あります。いずれも素晴らしいツールですが、そういった計測ツールのほとんどが広告のROIを可視化するものであり、デジタル上の「コンテンツ」にスポットを当てた計測ツールがこれまでほとんど見当たらなかったのも事実だと思います。そういった現状に対して、弊社では誰でも簡単に「コンテンツがビジネスゴールに与えているインパクト」を分析することができるようなダッシュボードをご提供しています。

–御社のサービス「TRENDEMON」では広範囲に渡ってカスタマー・ジャーニーを可視化することで、 どのようなコンテンツがビジネスゴールに貢献しているのか把握することができるのですね。

 現在、デジタル上でのカスタマー・ジャーニーはますます複雑になり、長期化しています。その背景として、広告に反応しづらくなっている方が増えているということも挙げられます。ニールセンの調査によると現在の生活者は「購買行動を行うまで平均で11個以上のコンテンツを消費する」というデータがあります。そこでTRENDEMONではワンタグをご設置頂くだけでクロスドメインかつクロスデバイスでカスタマージャーニーを一気通貫で分析できるようになっています。しかしながら、ユーザーのデジタル上でのカスタマージャーニーのデータ量は膨大な大きさになります。ただでさえ忙しいコンテンツマーケティングのご担当者様が集計や分析に多くの時間を割くことは現実的ではありません。
 そのため、TRENDEMONは予め膨大なジャーニーデータからご担当者様が実際にすぐ、改善アクションに移れるようなインサイトを複数ダッシュボード上でご提供しています。

–料金体系についてはいかがですか。

 通常、SaaS系のプロダクトは、オプションで価格をアドオンしていくケースがほとんどですが、当社の場合は金額体系を可能な限りシンプルにしようと 考え、PVによる従量課金制をとったサブスクリプション型の年間契約が基本となっています。
  まだ立ち上げフェーズという状況もありますが、現時点ではご導入頂いた企業様には必ずオンボーディングから分析、レポーティングなど含めカスタマーサクセスチームがサポートさせて頂いております。弊社の理念として、TRENDEMONを使って頂くことが目的ではなく、責任を持ってお客様のビジネスを一緒にグロースさせて頂くことが弊社の最終的な目標にあります。

–グローバル企業と比べて、日本企業ならではビジネス特性もあるのではと思います。

 確かに国内ではディテールオリエンテッドな気質が あるように感じています。グローバルの場合、 PLAN(計画)してからアクションするまでのスピードが早いかと思うのですが、国内ではディテール部分をしっかりと詰めてからでないとなかなかアクションに移れない光景をよく目にします。どちらが良いということではないのですが、逆に日本市場のニーズを細かく、正確にキャッチアップし、プロダクトに反映しローカライズすることに成功すれば、間違いなくどこの国でも戦えるプロダクトになっていると、弊社では本国の開発チーム含めて共通の認識としています。

–今後のプロダクトの方向性については、どのような展望をお持ちですか。

 現在、弊社のプロダクトは計測ツールという位置づけではありますが、パートナー企業であるMAやCDPを提供する企業様とのAPI、データ連携もすでに行っています。たとえば、弊社のアトリビューションスコアを元にしてメディア内部の回遊性を上げる、コンテンツのオートレコメンド表示機能であるPERSONALIZATIONや、店舗での購買データから顧客デモグラ情報をベースにしたコンテンツ分析なども順次リリース予定となっています。
 CDPを提供するパートナー企業様との連携では、年代や性別などのデモグラ情報で見た時に店舗での購買者がオフラインでの購入を決断するまでにどのようなコンテンツを多く消費する傾向にあるのかといった非常に興味深いインサイト事例が出てきています。
 更に、現状のWEB施策の大半がCPAベースで施策のパフォーマンスが評価されがちですが、実際にはCPAだけでなく、ブランドに対して興味を持ってもらうという”入り口”としての要素もきちんと評価されるべきだと思っています。
 非常に基本的なことではありますが、広告ごとに役割が存在し、例えば、読み物系のコンテンツを通してブランドに対して興味や親近感、新たな気付きなどを感じてもらったりする中で、態度変容や能動的な行動を促されるようなモーメントが必ずカスタマージャーニー上のどこかで発生します。その重要なモーメントを確実に捉える為に弊社ではATTENTIVE(高頻度接触者)オーディエンスという指標をリリース致しました。ATTENTIVEオーディエンスとは、「過去30日間で2回以上来訪し、尚且3つ以上のコンテンツを読了している」という定義のもとコンテンツに対して通常の来訪ユーザーよりも極めて高いエンゲージメントをもったユーザーを「見込み顧客」として個別にダッシュボード上でインサイト化しています。自社の調査の結果、このATTENTIVEオーディエンスは通常の来訪ユーザーと比較して3倍近くのCVRがあるという実績も出てきております。

–現在、お客様の中で、コンテンツマーケティングに取り組んでいる企業の比率はどれくらいですか。

 グローバルでは多くの企業がコンテンツマーケティングを展開していますが、日本ではまだ数えるくらいというのが現状です。一般に、アメリカのマーケティングが日本へ到達するのに3年かかると言われていますが、その一方、アメリカよりも緻密で高度な分析を行なっているお客様も多いので、一概にアメリカに比べて遅れているとは言えないと思います。
 とはいえ、現実としてコンテンツ制作をする上で依然としてライターさんの属人的な勘や経験値といったものでしかコンテンツの制作、量産化ができていないお客様が国内では多くいるのではないかとも感じています。また、自社の調査によれば、オウンド・メディアのコンテンツのうち、コンバージョンに寄与しているのはわずか15%だったという非常にセンセーショナルなデータもあります。
 国内では特にラストタッチにおける広告のROIにはセンシティブな方が多い一方で、興味深いことに多くの予算と人的リソースも投下されているであろう大切な「コンテンツ」のROIの可視化に取り組もうとしている企業は思った以上に少ないと率直に感じています。
 大きな要因のひとつとしては、冒頭でお話した通り、これまでコンテンツの価値を可視化しようとした時に適切な分析ツールが存在しなかったことが考えられます。
 コンテンツのROIを明らかにすることができれば、さらに国内でのコンテンツマーケティングへの成長スピードは加速すると信じています。

ますます注目を集める「カスタマーサクセス」のポジション

–コンテンツマーケティングがますます活発になると予想される日本のデジタルマーケティング市場において、今後は、どのような人材が求められると思いますか。

  私のような者が言えた立場ではまだないのですが(笑)、自分へのメッセージとしてもあえて言うとすると、 弊社はカスタマーサクセスというポジションを非常に重視しています。その背景として、弊社のようなSaaS系ソフトウェアのプロダクトのほとんどがクラウドベースのプロダクトということもあり、お客様が従来のような最初の契約で大金を支払ってソフトウェア自体を「所有」する必要がなくなってきています。そうした状況の中で一定の契約期間の中で「利用する」ということに重きをおいた、サブスクリプション型のビジネスが現在多く広まっています。
 そういったサブスクリプションの世界では、常にお客様の満足度を上げ続ける必要が出てきます。その中核の役割を果たすのが「カスタマーサクセス」というポジションです。文字通りお客様のビジネスを成功に導くことが最終ゴールのため、お客様視点で物事を考えることが求められます。ですが、とりわけ弊社のような立ち上げフェーズという状況ですとどうしても気がつくと自分も導入社数など、いかにプロダクトのシェアを伸ばすかということばかりに気を取られ、近視眼になってしまう時があります。
 話が脱線しましたが、そういった状況の中でも、そこは焦らず目の前のお客様の視点で物事を考えることができ、適切なアクションが取れるような人がより一層求められてくると感じています。
 自分自身としては上記の役割を果たすにはまだまだ至らないところだらけではありますが、現在は本国の優秀なチームの方達のサポートや国内のコンテンツマーケティングを取り組まれている先輩方からのサポート頂きながら少しでもカスタマーサクセスの役割を果たせるような人材になりたいと思います。

 
–カスタマーサクセスはサブスクリプション型プロダクトに特化するサービスとも言えそうですが、そうしたサービスを受ける企業側にとっては、ビジネスを成長させるためにどのような姿勢が必要でしょうか。

  自戒を込めて言うと、新しい試みに対して進んで挑戦し、最新の事例を作ることに前のめりで取り組めるように、失敗を恐れずにリスクを取り続けるマインドを常に持って日々の業務を行っていきたいと思っています。実際、当社のお客様にもそうした方が多く、私自身、TRENDEMONを新規のお客様にご説明するにあたり、 今までにない概念を持った特殊なプロダクトであるため、当初は提案するのが大変だろうと予想していたんです。しかし実際は、 「こういうプロダクトを待っていたんですよ!」と好意的に受け止めてくださる方も多く、そうしたお客様はサービスの活用によって、ますます業績を伸ばしていらっしゃいます。当社としても、これからますます人員を拡充してサービスを充実させ、 当社のミッションでもある「コンテンツ計測の世界標準」になるべく、コンテンツマーケティングを通してお客様のビジネスゴールに徹底的にコミットしていきたいと思っています。

嶋添 心悟氏
TRENDEMON JAPAN 株式会社
カスタマーサクセスマネジャー

2013年新卒として SEPTENI JAPANに入社。約3年間ソーシャルメディアの立ち上げメンバーとして従事し、Facebook、Twitterのコンサルティングを担当。2016年には 博報堂DY Digitalにて企業のLINE公式アカウントのコンサルティングに従事。2018年からはTRENDEMON JAPANにてCustomer Success Managerとして日本オフィスの創設メンバーとしてビジネス開発に従事している。