「作る」と「届ける」。アマナがコンテンツ制作で大事にしていること

国内最大手のコンテンツソリューション・カンパニーであるアマナグループは、近年、コンテンツを「作る」ことにとどまらず、作ったものを「届ける」ことにも力を入れている。読み物から映像まで幅広い形態のコンテンツが乱立する中、「伝える」ではなく「伝わるコンテンツ」を作り続けるアマナグループが、コンテンツ制作において大切にしていることはどんなことなのだろうか。話を伺った。

―アマナグループのコンテンツ制作に対する考え方や取り組みについて教えてください。

まず、アマナを中心とした10数社のグループ会社で構成される「アマナグループ」は、国内においては日本最大級のコンテンツソリューション・カンパニーだと私たちは自負しています。企業のコミュニケーションに必要なあらゆるコンテンツを、ビジュアル1枚から映像、イベントにいたるまで制作するカンパニーです。今年で40周年を迎えましたが、コンテンツという領域においてはいろいろなブランドさんとお取引させていただいています。

40年間の大半においては、コンテンツを作ることが主な生業だったのですが、デジタル情報化社会による情報の大きな洪水ができて、作っただけでは届かなくなった昨今、「どうやって届けていくのか」の視点も求められるようになりました。その結果、様々なコンテンツを届けるプラットフォームを活用して、ディストリビューション領域に対してもさまざまな施策をおこなうようになりました。

作ったコンテンツを最適なユーザーにつなげるのにレコメンデーションは有益

―ディストリビューションを考える上で大切にしていることは?

「CONTENT is KING, DISTRIBUTION is QUEEN.」という北米で生まれた言葉があり、日本でもその概念が少しずつ定着してきていますが、コンテンツとディストリビューションにおける本当の意味での両視点を持つことが重要という考え方です。デジタルコミュニケーションの領域では「DISTRIBUTION is KING」な視点で対話が進み、どうしても数字や効率主導主義に陥りがちです。しかし、本来、人の心を動かすのはコンテンツそのものであり、その視点抜きではパフォーマンスは最大化されません。そしてそれは、中長期的にビジネスインパクトへ大きな影響をもたらします。クライアントさんもそのことを理解されているので、コンテンツを生業にしてきたアマナグループがディストリビューション領域まで手がけることは全体最適の視点においても反応がよく、我々の事業の中でもその領域が伸びてきているという現実があります。

先程、様々なコンテンツを届けるプラットフォームを活用しているとお伝えしましたが、その中でも非常に相性が良いと感じるのが、レコメンデーションプラットフォームです。
当社では、記事コンテンツ制作や企業のオウンドメディア支援案件も多いので、レコメンデーションという届け方はかなり相性がいいんです。ソリューションベンダーさん数社とおつきあいさせていただいています。

―複数社ご利用されている理由を教えてください。

それぞれの特徴が違うので、実際の案件において複数社を活用してみることでパフォーマンスの横比較をし、案件特性と各プラットフォームとの相性を見ているのですが、その結果を見ると、総じてアウトブレインはいい数字を出しています。

これは複数のレコメンデーションを使った某案件の横比較のグラフで、折れ線が読了率、棒グラフが平均滞在時間を表しているのですが、アウトブレインはその両方ともがすぐれていることがわかります。比較をとったのは記事コンテンツで、目的はブランディング。そのブランドに共感してもらうことが目的だったので、記事をしっかり読んでくれることがとても大切になります。滞在時間が長いということは、興味をもってじっくり読んでくれているということ。つまり、エンゲージしているということです。

我々はこのエンゲージメントに非常に注目しています。獲得とリーチは、データとしては非常にわかりやすいですが、益々コモディティ化が進む現代において選ばれ続けるためには、より消費者との深いコミュニケーションで共感や理解を図ることが重要となります。

プラットフォームのフィロソフィに共感できるとおのずと親和性も高くなる

―どんなところに、プラットフォームごとの特徴の差を感じますか。

各社の特徴に差が出てくる要因は3つあると思っています。ひとつめは「メディアのネットワークの質とバラエティ」、2つめは「届けるためのアルゴリズム」、そして3つめは「プラットフォームを運営する方々のフィロソフィ」です。アウトブレインに関して言うと、メディアネットワークの面においてはブランドセーフティが担保される安心・安全なプレミアムメディアが構築されている印象があります。要は、「こういう媒体には出したくないな」というものに掲載されてしまうことがない。アルゴリズムに関しては、検証の結果として、届けたかったユーザーに届いていることが一目瞭然です。

そしてフィロソフィに関しては、アウトブレインがコンテンツの質を重視していることは日々のコミュニケーションの中でも伝わってきます。たとえば、厳しい審査基準を設けて、質の悪いコンテンツやユーザーに誤解を与える情報などに目を光らせていますし、ガイドライン基準に則っていないコンテンツやサムネイル、タイトルは審査に通していません。同様に質を追い求めてきたアマナグループとしても、私たちが作る質にこだわるコンテンツは、質の高い届け方でなければ、正しいコミュニケーションにならない。だからこそ、アウトブレイン自体がコンテンツの質を理解してくれていることに安心感がありますし、この3つの視点において僕らと親和性が高いアウトブレインには高い信頼を寄せています。

とはいえ、訴求内容や届けたい人、目的に応じて、他のソリューションが相性が良い時もあります。ですので、基本的にはアウトブレインを推奨しながらも複数のレコメンドソリューションを使っています。複数のプラットフォームを使ってパフォーマンスの横比較をしながら、結果に応じて予算をアロケーションしていき、ディストリビューション最適化につなげています。

クリエイティブの変数の力を信じたい

―アマナグループがコンテンツを制作する上で大切にしていることを教えてください。

「質」ですね。“安かろう悪かろう”であってはならないと思っています。インターネット上での届け方の手段が溢れ、そのこと自体に注目が集まったため、CPMやCPC、CPAはどうかといった数字や効率主導主義になり、コンテンツの質が脇に置かれた印象があります。ですが、「CONTENT is KING, DISTRIBUTION is QUEEN.」は、コンテンツとディストリビューションの両方が存在して(キングとクイーンがそろって)、初めてひとつの“王国”を繁栄していけるもの。ディストリビューション最適またはコンテンツ最適だけ考えるのではなく、俯瞰で見て全体最適をはかっていくことが本来必要なんです。

もちろん、数字を見ながら最適化していくことも大事ですが、時にはそれを大きく超えるようなことがあります。それはなにかというと、クリエイティブの変数。そのため、ディストリビューション最適化だけではなく、クリエイティブの視点をどんどんいれていくことにより、数字だけを見ていては成し得ない大きなブレイクスルーを追求したい。クリエイティブの変数を活かしていきたいと思っています。

―コンテンツ制作において今後どういうことが大切になってくると思いますか。

やはり「質」ですね。これからさらに消費者の目は肥えてきますし、もっとコモディティ化は進むと思うので、そういった意味でも質は大切。ディストリビューションのプラットフォームの価値を最大化させるのは、コンテンツの質ですし、さらにいうならデジタルマーケティング全体のパフォーマンスも最大化させると思っているので、数字では語れない変数の力を信じてデジタルマーケティングをおこなっていきたいですね。

佐藤 勇太氏
株式会社アマナ / 執行役員
株式会社アマナデザイン / 取締役
CEO

株式会社アマナに入社後、広告制作プロデューサーとしてグラフィック、映像、WEB、イベントなど、企業のコミュニケーションに必要な幅広い分野でのコンテンツ制作事業に従事。現在は、国内外の様々なデジタルマーケティングプラットフォーマーとの国内連携を推進しながら、アマナグループにおけるデジタルマーケティング事業を担当。

「コンテンツ・マーケティングの変化とトレンド」株式会社アマナデザイン 取締役 釜田俊介氏

世界各国の出版社やデジタルパブリッシャーが保有する“約5000メディア、4000万コンテンツ”の良質なライセンスドコンテンツを、独自のマネジメントシステム「コンテンツ・マーケティング・プラットフォーム」を通して提供する米NewsCred(ニュースクレッド)。そのNewsCredと国内独占パートナーシップを締結したアマナデザインは、今、日本のコンテンツマーケティングについてどう見るのか。現状と未来を語ってもらった。

まさに、今はコンテンツマーケティングの過渡期

–米NewsCredとのパートナーシップ締結について、現状を教えてください。

 2017年に、アマナデザインは国内独占パートナーシップを締結し、NewsCredのソリューションを取り扱い始めました。その後、2018年9月に主催した「ThinkContent Tokyo 2018」を契機として、多くの企業様から引き合いをいただくようになりました。ご相談の内容はさまざまですが、ほとんどに通じているのが、「コンテンツマーケティングにはすでに着手しているけれど、行き詰まりを感じている」という点です。
 もともと日本のコンテンツマーケティングは、スモールビジネスからスタートしていて、たとえば開業医の方々や弁護士事務所が自分でブログを書き、SNSで流して、患者や顧客にきてもらうというようなスタイルが一般的でした。しかし、そのやり方を大きなブランドが取り入れようとすると、もともとターゲットの母数も違うし、伝えたいコンセプトも異なっている。その上、コンテンツはどんどん作らなければならず、ほとんどのブランドがそれを自前で用意しようとするので負担だけが大きくなる。何より、チーム全員で明確なKPIを共有できておらず、プロセスに対する組織内での共通認識が取れていないため、コンテンツマーケティングを実践する上で矛盾が生じているケースが多いんです。

–NewsCredを導入することによって、そうした矛盾が解決できるということですね。

 NewsCredには大きく分けて3つの利点があります。ひとつ目は、コンテンツマーケティングの実施を効率化するプラットフォームの提供。ふたつ目は、多種多様なテーマを網羅するコンテンツの提供。三つ目は、造詣が深い専門家によるアドバイザリーサービスの提供。つまり、NewsCredのフレームワークを採用すれば、おのずとブランド内でKPIが明確になり、 組織内での共通認識が生まれ、効率よくコンテンツマーケティングを行うことができるのです。
 北米ではBtoB企業の約9割がコンテンツマーケティングを実施しているというデータもありますが、国内の上場企業ではおそらくま5〜6割。アメリカと日本では企業文化が違うのでアメリカの水準まで到達するのは難しいかもしれませんが、今後、もっと多くの上場企業がコンテンツマーケティングを活発に行えば、日本独自の企業文化だけでは到底やっていくことができなくなり、もっと世界の潮流に近づくのではないかと思います。

”個人情報”から”コンテンツ情報”へ

–コンテンツマーケティングのトレンドについて、いかがお考えですか。

 近年、FacebookやAmazonなど、個人データの流出問題が相次いだことから、個人情報の取り扱いにはますます厳しい目が向けられています。そうなると、今後は cookieなどのアノニマスな個人情報を使ったマーケティングではなく、一つひとつのコンテンツがどれだけ人に見られていて、それがどのコンテンツの消費につながっていて、というような、コンテンツ自体の消費動向を見ながら費用対効果をあげていくのが主流になるのではと思います。
 その典型が、Netflix。彼らは顧客の個人情報を集めていますが、「誰が、どのコンテンツを好むか」というプライベートな情報よりも、「このコンテンツを観たユーザーは、次にどれを観るか」「何時間観たら、次のコンテンツへ行くか」など、コンテンツの摂取情報にフォーカスしてターゲティングをしており、その情報を元にオリジナルのコンテンツ制作に取り組んでいます。このような傾向が今後、日本でも強くなるのではないでしょうか。特に現代の日本では多様化が進んでいて、同じ20代の女性で、同じ地域に住んでいたとしても、まったく同じものに興味を持つわけではありません。このように、今後は個人情報よりもむしろ、非常に粒度の細かいコンテンツの摂取情報がキーとなるのではないでしょうか。

–コンテンツや興味の摂取は、まさにNewsCredが得意とするところですね。

 近年は、企業が嘘をつけなくなってきた時代です。というのも、ユーザーは「その企業が何を作るのか」ということより「誰が」「なぜ、それを作るのか」という文脈のコンテクストに注目し始め、コンテンツのクオリティが求められるようになってきたと感じるからです。
 ある調査で*、「生活者にとって信用できるソースは何か」と尋ねたところ、「知人からの口コミ」「第三者の口コミ」などに続き、「企業のウエブサイト」という回答が上がりました。企業が嘘をつけなくなってきたということは、そもそも企業が持っている価値を 正直にコンテンツ化しなければ意味を感じてもらえないということ。 この環境においては、コンテンツの「質」が求められるケースが多く、自前主義では必要最低限の「質」を担保することも難しく、
制作の場で培ってきた知見やリスペクトが求められる。そう考えると、日本国内のコンテンツマーケティングはまだ課題が多く、NewsCredのノウハウやアマナが求めてきた表現力が融合することで、 より本質的なコミュニケーション手段を提供できる機会はたくさんあるのではないかと感じます。

ブランドに対する深い愛と、チャネルを横断する視座

–今後、コンテンツマーケティングビジネスで求められるのは、どのような人材だと思いますか。

 コンテンツマーケティングのプラットフォームを提供するNewsCredサイドの視点で言わせていただければ、ブランドサイドに最も求めたいものは、ブランドに対する深い理解とこだわり。各ブランドの担当者様は、当然ながら商品やブランドに対して造詣が深く、その分野においては、誰よりもエキスパートであるとNewsCredでは考えています。そのことは、コラボレーションする外部のクリエイターやマーケターにも良い影響を及ぼし、自然とそのコンテンツマーケティングを活性化させます。もちろん、こだわりが強すぎても衝突が多くなってしまうかもしれませんが(笑)、ブランドやその商品に対する深い理解とこだわりはまず、コンテンツマーケティングを成功させるための前提条件となるでしょう。
 もうひとつ、SNSやマスメディア、屋外広告などあらゆるチャネルを横断して見渡せるリーダーも必要。「この人はSNSの担当」「この人はメルマガ担当」など役割が完全に縦割りになっていて、それらのイニシアチブが取れていなければ、ROIを追求することは難しい。セクションを超えて共通言語を形成し、全てのチャネルを連携させて顧客にアプローチする。こうした視座を持てる人が、今後、より重要なポジションを占めるではと思いますし、NewsCredが提供するプラットフォームを採用することで、おのずと各チャネルの共通言語化が進み、オムニチャネル戦略を追求することが可能になります。 NewsCredではこの分野のことを統合マーケティング(インテグレーテッドマーケティング)と呼び、今年からソリューションとして展開を始めていますが、こうした視点でも、多くの企業にソリューションを提供していきたいですね。

* Statista “Consumer trust in advertising worldwide from 2007 to 2015, by ad format”
https://www.statista.com/statistics/222698/consumer-trust-in-different-types-of-advertising/

釜田 俊介氏
株式会社アマナデザイン 取締役 

NewsCredコンテンツマーケティングアドバイザリーサービス担当。株式会社アマナインタラクティブ新卒入社。プロデューサーとして、モバイルメディア事業、コンテンツマーケティング事業などに従事。2016年より株式会社アマナデザインに転任。現同社取締役。