ユーザーが「自分ゴト化する」共感型コミュニケーション ~サッポロビール・ライオンの事例で学ぶ~ 第3部 <ライオンの事例で学ぶ>「ワン・パーパス」×「マルチ・クリエイティブ」〜自分ゴト化・共感を呼ぶ新たな動画コミュニケーション

2019年2月20日、東京・恵比寿でOutbrain、amana、ALPHABOAT、indaHash、Teadsの5社による共催セミナーが開催されました。セミナーテーマは、『ユーザーが「自分ゴト化する」共感型コミュニケーション』。
第3部のテーマは、ライオンの事例に学ぶ「ワン・パーパス」×「マルチ・クリエイティブ」。従来型の一方通行なコミュニケーションではお客にブランドメッセージが届きにくいソーシャル時代に、タッグを組んだ「クリニカ」とAlphaBoatが、さまざまなインフルエンサーを活用して、マルチ・クリエイティブの動画広告を制作した背景についてのトークが展開されました。

自社の「ブランド・パーパス」を考えるところからスタート

トーク序盤、西谷氏が切り出したテーマは「ブランド・パーパス」。これは、「ブランド理念」「ブランドの大義」「ブランドがサスティナブルに存在する理由」などと解釈される言葉ですが、今回の議題となっているライオンの事例においては、動画制作の前段階に、ブランド内で「ブランド・パーパス」に関する議論が長時間続いたといいます。

その理由を説明したのは横手氏。「機能的にも優れた商品がこれだけ溢れている日本では、日常生活の中で改めて、何が良くて何が悪いかを考える時間はないですよね。そんな中で我々マーケッターが何のために存在しているかというと、ブランドを使う価値体験を高めるため。そこで、『ブランド・パーパス』という考え方をまずは自分たちが取り入れることにしたんです」と明かします。

「クリニカに関していうと、これまでは、『日本を予防歯科の先進国にする』というスローガンをもとに展開していましたが、これはあくまでもライオン、クリニカが主語。しかしこれからは社会やお客さまこそ主体と考えたとき、『わたしたちは社会や顧客と共にどんな価値を生み出していくべきか?』『わたしたちは何のために活動するのか?』という問いにぶち当たりました」。

横手 弘宣氏
(ライオン株式会社)
その背景にあるのは、「価値の多様化」「選択の自由=自己責任」「正解がわかりづらい社会」といった、今の時代ならではの要素。こうした時代背景をもとに多くの生活者たちは将来に不安を抱えており、忙しい毎日の中、自己投資に対して前向きでありつつも、思うように行動できていないことに罪悪感を抱くこともしばしばあります。

これをクリニカという商品に当てはめて考えると、「歯医者さんにほめられる歯に」をコピーとして掲げることにより、「医者から褒められたら満足=罪悪感がぬぐわれる」ということになります。つまり、その一瞬をいかに切り取るかが、ブランドにとって大切なことだというのです。

「人は『誰かに褒められたい』欲求があるものですし、何かを達成したら次もがんばろうと前向きになれます。そのサイクルをつなげられたら、社会に対して新しいメッセージを発信できると考えました」と横手氏は説明する。

「歯磨きして褒められることはなかなかありませんが、きちんと磨いて虫歯を予防していることで、“わたしはちゃんとがんばっている”と自分を認められると、歯も健康になるし、日々の歯磨きにも前向きに取り組めると思うんです」と、さらに続けました。

ブランド・パーパスと消費者のニーズとの接点を考えてコピーやストーリーを制作

これを受けてAlphaBoatは、顧客に直接ヒアリングして、日常でどんな風景を見ているのか、インサイトをあぶりだしてコンテンツの制作に入ることに決定。結果、「大人になるにつれて褒める機会が増える一方、褒められる機会が減る」というユーザーインサイトを抽出しました。そうしたインサイトに基づくクリエイティブコピーの開発を実施し、その結果、「#大人は大変だ。」「#大人だって、ほめられたい。」のコピーが生まれたのです。

「大事なのは共感していただくことなので、メーカーからの押し付けにはしたくないと思っていたんです。生活者が心の中で思っている言葉を表したこの言葉はひとつの答えですし、歯磨きをしている時間にはその日一日のことを思い出すこともあるから、“1日を振り返る歯磨き”を作れることに親和性を感じました」と福井氏もうなずきます。

福井 幸二氏
(ライオン株式会社)
続いて横井氏が、今回のコンセプトやターゲットなどについて説明。まずコンセプトは、「37年間にわたって洗面台から家庭を見守ってきたクリニカが、洗面台の鏡の視点から、仕事や子育てに奮闘する大人を励ます」。ターゲットは、日常生活をがんばっている大人たちで、特に30代以上の女性。ストーリーをうまく説明することで、それを「自分ごと化」してもらいたいと考えたといいます。

そこで、一人ひとりが自分を深く投影できるターゲットを見つけてより深く共感できるよう、ペルソナに応じて3パターンの広告を制作。3つはそれぞれ、「ポストイット編」「よくできました編」「鏡絵日記編」で、お客が主語になって、「褒められる瞬間」を反芻できるような内容に仕上げました。ポイントは、ムービーの主語が「がんばる大人」であって、ブランドではないことです。

これに対してAlphaBoatがおこなったのは、共感を得るためのインフルエンサー施策。ドラマ出演をストーリー化して、人柄や雰囲気を重視したインフルエンサーのキャスティングを実施し、今回のドラマ出演という出来事自体をひとつのストーリーとして展開。さらに、ドラマのテーマやメッセージに共感するインフルエンサーに、同じ熱量を持った仲間を探してつながってもらうことで、コミュニティを形成してもらい、ムービーの熱量を拡散してもらいました。

西谷 大蔵氏
(AlphaBoat合同会社)
また、音楽もフルスクラッチ。フォロワー数などの量的基準、エンゲージメント率などの質的基準を超越して熱量を伝えることに重点を置いたインフルエンサー施策を実行しました。

動画を埋め込んだ記事を作成することによってさらに拡散

コンテンツ拡散のためにさらにさまざまな施策をおこなったのはアウトブレインです。2分半にもおよぶ動画の内容を、パケット代を気にする若年層にも知ってもらうため、動画を埋め込んだ記事の作成を実施。エキサイトニュース、マイナビに、それぞれ違う角度からコンテンツを切り取って紹介してもらうことを決定しました。

さらに、記事内での動画の視聴完了率、滞在率、クリニカのwebサイトへの遷移率もはかり、ちゃんと共感を呼べたかという観点から、コンテンツの拡散というKPIとして精査しました。

「膨大な組み合わせの中から動画の視聴完了率やブランドサイト遷移などのエンゲージ指標に基づいて、動画再生コンテンツへの送客をコントロールしています。リーチや送客数の最大化ではなく、エンゲージの最大化ですね」と秋元氏。

記事を読むと自動的に動画が再生されますが、動画視聴完了率は20%前後で、2分半の動画にしては高い数字を出すことに成功しました。

秋元 陸氏
(アウトブレインジャパン株式会社)
また、次回のステップに関して福井氏は、「この施策でもっとも大切なのはクリニカのパーパスや思いが伝わることなので、ちゃんと伝わっているか、伝わっていないとしたらどこか、共感ポイントはどこかを考えながら次のコンテンツ作りにつなげたい」とコメント。

これを受けて西谷氏は、「ソーシャルエンターテインメントをプロデュースする上では、社会全体へのアンチテーゼを考えるアプローチが重要。これはブランド・パーパスと密接に連携していますが、特にミレニアル世代を考える上では不可欠なこと。これからは、フォロワー数やリーチ数より、生き方や姿勢、発信しているメッセージへの共感や賛同が大事になってくると思う」と締めくくりました。

ユーザーが「自分ゴト化する」共感型コミュニケーション ~サッポロビール・ライオンの事例で学ぶ~ 第2部 <スペシャルセッション> 次世代型動画広告とブランドセーフティ

2019年2月20日、東京・恵比寿でOutbrain、amana、ALPHABOAT、indaHash、Teadsの5社による共催セミナーが開催されました。セミナーテーマは、『ユーザーが「自分ゴト化する」共感型コミュニケーション』。
第2部では、ネスレ日本株式会社 媒体統轄室 村岡 慎太郎氏と、Integral Ad Science Japan株式会社 アカウント・エグゼクティブ 山口武氏によるスペシャルセッションが行われました。セッションテーマは「次世代型動画広告とブランドセーフティ」。成長し続ける動画広告市場において、これまで通り、リーチ獲得を目指すだけではなくエンゲージメントを高める次世代型サービスが次々と登場する中、企業としてのブランドセーフティを守りながら、最新サービスを活用する事は可能なのでしょうか。そしてその価値とはいかなるものかについてのトークがスタートしました。

ネガティブな結果を生む配信を避けるため、アドベリフィケーションを意識することが大切

セッション冒頭、山口氏が触れたのは「アドベリフィケーション」について。山口氏は、「デジタル広告は、ポジティブなバリューを得られるものだけでなく、ネガティブな結果を生むものもあります。たとえばブランド毀損につながる恐れのあるメディアに広告が配信されることもそうですし、配信したのに見られていないこともあります。こうした無駄を省いていくことがアドベリフィケーションです」と説明。

これに対して村岡氏は、自社製品を例として挙げながら、「たとえばネスカフェやキットカットの広告が、バイオレンスやアダルトなコンテンツの多いメディアに出ることも、マイナスイメージを植え付けることにつながります。ブランドセーフティを保つために、こうしたネガティブな要素を排除することは大切です」と相槌。ネスレでは、IASやプレビッドを利用することで、そうした事態を防ぎ、意図しないメディアに出る率を大幅に下げたといいます。

「ビューアビリティやプレビッドがビジネスにとってどんなバリューがあるか、可視化することはとても大切。たとえば、KPIに対する取り組みでプレビットをかけた結果、CPCの効率もよくなったことがわかりましたが、一般的にはプレビッドかけると在庫が減るため、CPIが高くなると想像されています。でも、結果としてCPCもよかったですし、数字として可視化できる状態にすることが大事だと再認識しました」と村岡氏。

村岡 慎太郎氏
(ネスレ日本株式会社)
また、オープン、プレビッド、PMPで比較したとき、プレビッドは広告認知効果が高く、ビューアビリティが高くなるため認知度の向上に効果があるとされていますが、さらに、PMPは新聞や雑誌など真剣に読まれるコンテンツに挿入されるバナーであるため、さらにユーザーの理解が高まることがわかりました。

さらに山口氏は、「インプレッションの質と量に関して言えば、今まで通りのCPA、CPCの考え方では、より安くより多く獲るのが目指すところ。リーチを軸にしたビューアビリティだと、見られたことだけが評価されてしまいがちです。でも動画広告が2秒流れても、それがどういう企業のものか認知されることは少なく、広告効果が実現できるのは6秒流れたあたりから。1~2秒だとブランド認知度は1%以下ですが、4~7秒だと認知度があがっていきます」と説明。加えて、コンバージョンと閲覧回数の関係性について調べたところ、キャンペーンの場合、広告を見る回数が8回を超えると認知度が高まることがわかっていると話しました。

それでは、全インプレッションの何パーセントのユーザーが8回以上視聴しているかというと0.3%程度。ビューアビリティの率を上げる取り組みをおこなう中でも、1、2回しか視聴していないユーザーが多く存在していることがわかったといいます。

さらに、ランディングページへの到達をコンバージョンとした場合、広告を見ることによってコンバージョン率が45.3%上昇することが判明。さらに、ビューアブルなインプレッションでの到達率は86.2%でした。これはランディングページだけでのデータですが、そのほかのコンバージョンポイントにおいても広告閲覧時間との関係性をグラフで確認したところ、15~30秒間広告を見ているユーザーがもっとも効果を出していることがわかりました。

閲覧回数や閲覧総時間を明確化して動画広告を可視化

「しかし衝撃的なことに、15~30秒見ている人はたったの13%。では、キャンペーンにとって最も効果的な閲覧時間の蓄積ができているユーザーは圧倒的に少ないのです。リーチ基準でビューアビリティの率だけを追い求め、1回1秒みてくれた人を増やすだけでは意味はなく、一人一人のユーザーに効果的な回数と時間、広告を見てもらうことが必要です。1~15秒しか広告を見ていないユーザーに広告をもっと見てもらい、15~30秒蓄積させることが重要。同時に、閲覧数過多のユーザーをどう減らしていくかも考えた方がいいんです」と山口氏。

さらに、「一番大切なのは、一つひとつのインプレッションじゃなく、蓄積した閲覧時間。実際のコンバージョンは、ランディングページ到達の場合もあれば購入という場合もありますが、それを達成するために必要な閲覧回数や時間の蓄積などを明確化することが大切」と述べました。

山口 武氏
(Integral Ad Science Japan株式会社)
また、「今回は静止画でスタートしましたが、本当にやりたいのは動画広告の可視化。今回の取り組み内容を次回は動画に横展開したい」と明かす村岡氏に対しては、「より効果的な動画を利用する理由付けはたくさん出てきています。海外ではすでにプレミアムパブリッシャーやコンテンツメディアの注目度もあがってきていますし、今後も我々としては、お客さまの各キャンペーンに役立つようなレポートを実現したい」と意気込みを見せました。

ユーザーが「自分ゴト化する」共感型コミュニケーション ~サッポロビール・ライオンの事例で学ぶ~ 第1部 <サッポロビールの事例で学ぶ> ユーザー視点での次世代型ブランドコミュニケーションとは

2019年2月20日、東京・恵比寿でOutbrain、amana、ALPHABOAT、indaHash、Teadsの5社による 共催セミナーが開催されました。セミナーテーマは、『ユーザーが「自分ゴト化する」共感型コミュニケーション』。スマートフォンの定着とデジタル・ネイティブ世代の増加に伴い、動画広告の主要プラットフォームが、テレビだけでなくオンラインへと広がっていった今、動画広告はよりターゲティング、パーソナライズしやすくなっています。しかし、ほとんどの企業は、既存のテレビCMをそのまま他のプラットフォームに転用しているのみ。
ターゲットユーザーごとに「適切なフォーマット」「適切なメッセージ」でのコミュニケーションを設計するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?
「マルチ・フォーマット」×「マルチ・メッセージ」をうまく組み合わせることで、ユーザーごとにパーソナライズ化させて、一人ひとりに「自分ごと」だと感じてもらうためにはどうすればいいのでしょうか?
第一部では、サッポロビール株式会社 / ブランド戦略部宣伝室 シニア メディア プランニング マネージャー福吉 敬氏を登壇者に迎え、企業の代わりにインフルエンサーが発信するCGMプラットフォームと最新の動画広告の活用について、事例を交えながら紹介します。

4マスに接触する人が減り、デジタルもアドブロックされる時代に何ができるかを考えた

イベント冒頭、今回のテーマについて口火を切ったのはサッポロビールの福吉氏。
「男は黙ってサッポロビール」などの名コピーを例に挙げながら、「コミュニケーションの主軸にあるものって、“ワン・ビジュアル、ワン・メッセージ”。すごく強いコピーとすごく強いビジュアルを打ち出すことで、ひとつのメッセージを伝えることはずっと続いている」と説明しました。

しかし、世の中は変わってきました。
「(広告として)一番強いのはテレビですが、一般的にテレビを観る時間が減ってデジタルの可処分時間が増えていて、若年層にいけばいくほどその傾向にあるのが現実です。だけど一方で、H8年の情報量が100だとすると、H18年には5,300、つまり530倍にもなっています。なぜなら、当時はパソコンがそこまで普及していなかったし、デジタルサイネージもなかったからです」。

情報が溢れかえっている現在において、多くの人が情報を得るデバイスはスマートフォンをはじめとするモバイル端末。そんな中、自分に不要な広告をカットするアドブロックを活用する人も増えており、せっかく広告を打っても、伝えたい相手に伝わらないという現象も起きています。

福吉 敬氏
(サッポロビール株式会社)
「アドブロックの利用率は、日本=10%、ポーランド=38%、アメリカ=24%と言われています。4マスに接触する人が減っている上に、デジタルはブロックする人が増えているとなると、我々がどれだけよい商品を作っても知ってもらえない、店頭で手に取ってもらえないという現象が起きることになります。だったらどうすれば、今までの方法では届かない人に伝えられるだろう? まずはそれを考えることからスタートしました」。

「今までの方法では届かなかった人に届ける」を目的に広告を打つことを決めたサッポロビールが、そのためのパートナーとして選んだのが、Teads Japan株式会社、indaHash、アウトブレインジャパン株式会社の3社。それぞれ、独自のソリューションに注目が集まっている会社です。

フォロワーが多いインスタグラマーが必ずしもインプレッションするとは限らない

「私たちが扱っているのは、ベストエンゲージメントビルディングプラットフォームです。大事なのは、リーチではなくエンゲージ。インフルエンサーマーケティングによって“伝えるプラットフォーム”を開発しています」。

野村 肇氏
(indaHash)
そう話すのは、indaHashの野村肇氏。野村氏によると、同社に登録しているインフルエンサーは82か国で約92万人。
量と質の両方を担保できる人材のみをインフルエンサーとして承認した上で、登録者に公募型でキャンペーンごとに通知を行い、「どういう投稿が可能か」をチェックしているため、クライアントはクリエイティブ軸でジャッジすることができるというものです。また、承認されたコンテンツが投稿された後は、すべて二次利用可能なことも大きな強みとなっています。

「これまでだとキャスティング会社がリストを出してきて、『何万人のフォロワーがいますよ』と提案されるのが一般的でしたが、実際の広告成果について、我々は担保されていませんでした。ところがindaHashさんのは違う。ブランドが伝えたいことを意図して伝えることができるのが画期的だと思い、取り組みを開始させてもらいました」と福吉氏も採用を決めた時のことを振り返ります。

静止画動画問わず大切なのは、「瞬時にお客の心をとらえること」

続くTeads Japanの今村氏は、「弊社は広告におけるクリエイティブの制作支援から実際の配信までを提供するプラットフォームです。特徴は、botの排除、ブランドにふさわしくない媒体などを排除することで、広告主のブランドを絶対に傷つけないこと。また、ディスプレイに現れた時点で初めて(課金を)カウントさせていただくということで、観られていない広告に対する請求は一切ありません」と挨拶。

さらに最近では、企業が持っている素材をデバイスに対して最適化する業務にも力を入れていると説明しました。
「テレビCMは15秒で起承転結を作ってメッセージを伝えるものです。でもスマホメディアは一瞬でお客の心をキャッチしないとその先の接触時間はないので、静止画動画関係なく、いかにお客の心を掴むかを主軸に据えて広告を制作しています」。

今村 幸彦氏
(Teads Japan株式会社)
これに対して福吉氏は、「Teads スタジオ独自の、モーメントをとらえて人を惹きつけるなどのジャイロ、スワイプ機能がすばらしいと思っています。動画で配信したいと思っている人は多いけれど、実は静止画にも力があるんだと気づかせてくれたのがTeadsです」とコメントしました。

時間帯ごとに異なるペルソナを設定

続いてはアウトブレイン。
「我々はオンラインメディアの記事の下に『次にあなたへおすすめ』という形でユーザー様に次のレコメンデーションを提供している会社で、広告をクリック単価ベースで出稿いただけます。目指すところは、ひとつの記事を読み終わった後にもう1記事何か読みたいなという読者に対して、ディスカバリーモードといわれるところでの広告主です」と同社嶋瀬氏が説明すると、福吉氏は、「コンテンツを観るモチベーションを持っている人の興味を刺激して連れてくるところ、『次に読みたいものはなんだろう』をアルゴリズムで当てるところがおもしろいですよね」と笑顔を見せました。

さらにこのアルゴリズムに関して嶋瀬氏は、「さまざまなモーメントごとにペルソナを設計しているのですが、朝のペルソナと夜のペルソナは全然違います。朝の媒体と夜の媒体を広くカバーすることで、ユーザーが観たいものを観たいときに表示できるのが我々の強み」と言葉を足しました。

嶋瀬 宏氏
(アウトブレインジャパン株式会社)

Insta投稿の二次利用でエンゲージメント率が数倍にUP

各社のこうしたソリューションをもとに何を展開できるかを考えたサッポロビール。
今回の広告展開にあたり、まずはindaHashに、「黒ラベルで乾杯するシーン自体をリーチにかけてください」とオーダーしました。
「よくあるインフルエンサーマーケティングだとみんなコピペで文章が一緒。でもindaHashだと一人ひとり違うメッセージが出てくるのがよかった。しかも二次利用可能だから、我々のサイトのコンテンツとして埋め込むことができたんです。一つひとつのパネルを押すとメッセージが動く点も魅力的でした」と福吉氏。
 もちろん、結果も上々。
「今回のサッポロさんの件に限らず、過去の投稿で嗜好がマッチしていないインフルエンサーは選ばないようにしています。そのうえで、協力してもらうインフルエンサーにはきちんとブランドへの理解や共感を求めて、ブランドストーリーを伝えてもらっているので、通常はハッシュタグをいれても1~2%のエンゲージメント率なところ、今回は6%を達成できました」と野村氏は明かしました。

佐藤 勇太氏
(株式会社アマナ)

Instaの投稿をクリエイティブに可変することでさらに魅力的に!

続くTeadsは、2パターンのバナー広告で勝負に出ました。
「1つは、既存の動画・静止画素材をもとにクリエイティブを最適化したもので、もう1つは、indaHashさんがリアルタイムで生成してくるインフルエンサーさんの静止画を、スマホをスクロールすることでクリエイティブに可変していくものを作りました」。

今村氏の言葉を受けて福吉氏は、「説明を聞いてすぐ、そんなおもしろいことはすぐにでもやりたい! と即決しました。ビールが一番おいしそうに見える瞬間を切り取ってコピーをのせて、それを動画にして動きをつけるなんてすごく興味深くて」と当時を振り返ります。

もちろん、効果も一目瞭然。「有効トラフィックは99.9%、ベンチマークは94%を上回り、ブランドセーフも98.7%を達成できました。でも、一番特徴的だったのはアベレージインビュータイム(=広告に接触したタイムの平均)。12.8秒も接してくれていたし、ベンチタイムは1.7秒でした」と今村氏も語ります。

ユーザーの能動的な行動を誘発するユニークな施策

また、アウトブレインはクリック再生型動画「FOCUS」を活用。動画の再生ボタンをクリックすることで初めて再生されるスタイルのため、興味を持ったユーザーのみが主体的に視聴できるのがこの広告の大きな特長です。
「クリックするとフル画面表示になって、終わった後に次の動画を選べるということでエンゲージメント性を高めています。また、(今回はアルコール商品のため)未成年は配信を除外して、夕方以降のパフォーマンスが高くなる時間帯を狙いました。さらに、サムネイルにUGCを活用することによって効果を検証することで、新しいユーザーを連れてくることにも成功しています」と嶋瀬氏。

福吉氏も、「60秒の長尺に観たことがないようなUGCが出てきて、終わるとさらに次の動画を選択できることで、能動的な行動を誘発していますよね。エンゲージメントの高い人は『もっと観たい』という気持ちを持っているでしょうし、さらにエンゲージを高めるためには非常におもしろいクリエイティブだと感じました」と納得。

これらのソリューションを活用したことで、「indaHashの、自分の言葉で発信するユーザー目線に近いコミュニケーションとその多様性を知ることができましたし、アウトブレインやTeadsのプレミアムな面での発信では、これまで届かなかった顧客にアプローチできたのもよかった」と福吉氏。
ブランドの可能性が大きく拡大されたことで、これまでとは異なる形でのメディア発信に大きな意義を感じることができたと締めくくりました。

透明性とユーザーファーストを実現する“能動的なインタラクティブ広告”の可能性 Teads Japan株式会社 マネージング・ディレクター 今村 幸彦氏

動画広告は現在、まさに過渡期にある。これまでは「接触・認知」から「購入」へ至るマーケティングファネルのうち、最上部と最下部に力点が置かれ、両者の間を埋めるべきものにはそれほど注意が払われてこなかった。いかにして、ブランドに対して興味を持ってもらい、好感と信頼を得てもらうか。実はその中間プロセスにこそ、動画広告が果たすべき役割と意義がある。ビューアブルでブランドセーフな広告プラットフォームを提供するTeads。「良質な媒体社様と戦略的にパートナー関係を結び、ユーザー体験に細心の注意を払う。質の高い広告には、おのずと効果がついてくる」と語るTeads Japan株式会社の今村幸彦氏にお話をうかがった。

日本の動画広告戦略と施策に新しい価値を提供

–成長を続ける動画広告市場ですが、現在のトレンドとしてどのようなことを感じますか。

 2017年、インターネット広告に対する課題が浮上し、特に、アドフラウド、ブランドセーフティー、ビューアビリティーなど、広告全体の質が問われるようになりました。
 これまでは、配信の質やユーザー体験の質、隣接するコンテンツの質などはあまり注目されず、 CPMとCPCの二軸で日本のデジタルマーケティングは成長を続けてきました。しかし、マーケティングファネル全体を見てみると、ミッドファネルにおける指標がほとんど確立されてこなかった。つまり、これまでの動画広告は「接触・認知」と「購買」だけが注目され、「興味・関心・理解」と「購入検討」というプロセスへの指標の評価が重要視されてこなかったんです。KPIのほとんどがユーザーの広告体験の質や、視認性をほとんど考慮しない、再生開始単価・再生完了単価でした。しかしそれでは、「顧客を創造する」という観点からの施策がまったく取られていないことになります。当然、将来的に有望な顧客を育てることもできませんし、購買意欲を想起させることもできません。

–そこでマーケティングファネルにおいて、御社はミッドファネルにターゲットされているのですね。

 もちろん、ユーザーへのリーチや認知リフトというところにも貢献していますし、質の高い広告体験で購買意欲の想起にも貢献していますので、実際には「接触・認知」から「購入」まで、あらゆるファネルで働きかけを行っています。
 そうした中で、現在、当社が注目しているのは、広告への接触時間、つまり、ユーザーが広告に接触する時間をどれだけ長くできるかということです。現在、日本におけるインターネット広告市場は1兆5,000億円ですが、そのうち、動画広告が占めるのは1,900億円。劇的に成長したとはいえ、全体の約12〜13%でしかありません。まだ伸びしろがあるのです。
 動画広告の中では、FacebookやYouTubeの広告が大きな割合を占めますが、Facebookについていえば、平均わずか1.7秒で90%の人が広告から離脱してしまっており、広告との接触時間があまりにも短いことが課題とされています。一方、YouTubeでは一定時間必ず広告が表示されることによって、接触時間を確保することはできていますが、ユーザーの広告体験の質という観点からは好ましいとはいえません。また、不適切なコンテンツに広告が表示されてしまうかもしれないというブランドセーフの問題もあります。
 そこで当社では、ブランドセーフやビューアビリティなどの課題をクリアし、ネット広告の健全性を高めた上で、いかにして広告に対するユーザーの接触時間を長くするかということをテーマに設定。質の良い広告体験を提供し、好意的な認知を得ることでブランドに貢献したいと考えています。

–御社は創業当初より、「ユーザーファースト」という言葉を掲げています。

 「ユーザーファースト」とは、換言すれば、「質の高い広告体験」ということ。簡単にいえば、「ユーザーに嫌われない広告」ということです。とかく最近は、面倒な広告フォーマットが非常に多く、わざと閉じる”×(バツ)”ボタンをクリックしづらくしたり、そもそもこういったボタンを設置していなかったりする広告も少なくありません。また、無理やり広告を表示することで、視認性を高めようとする広告もあります。これでは本末転倒で、ユーザーはブランドを嫌がり、メディアから離れ、アドブロッカーを設定して、広告全体を遮断してしまうことになりかねません。日本では、アドブロックのユーザー数は10%程度ですが、欧米では4人にひとりがアドブロックを採用しています。これでは、オンライン広告の将来をとざすことになり、ユーザーへの広告機会を喪失してしまいます。

–そこで、御社は「ユーザーファースト」を唱えているのですね。

 当社の広告は記事と記事の間に挿入されますが、興味がなければ飛ばすこともできます。また、画面に広告が表示されて初めて再生が始まるため、確実にビューアビリティが保証されます。さらに、配信前に本当に人間が見ているのか確認しているため、アドフラウドの問題もクリアしています。
 当社は創業時から「ユーザーファースト」「ビューアビリティ」「アドフラウド」を課題にしていましたが、最初はそうしたことに対する認知が低く、実際に取り組もうというブランドはあまり多くありませんでした。近年ではグローバルブランドを中心に、課題として認識してきた感があり、大手ナショナルブランドの中にも、それに沿った形で広告をプランニングするところが出てきました。これは、適切な広告費が正しく投下されているのか、きちんと確認する物差しができてきたということ。ようやく、デジタル広告の“ダークサイド”に審判の光が当たり、正しく判定されるようになったということではないでしょうか。

–御社では270以上のプレミアム媒体とパートナーシップを組み、月間8.5億インプレッション規模のネットワークを構築していると聞きました。

「消費者にとって良質な広告体験」には、「品質の高い配信面」と「嫌われない、記憶に残る広告表現」の二つが必要です。実際、当社のオンライン広告は接触時間が長く、平均約12秒。しかし、デジタル広告に異論を唱え、デジタル広告費を大幅削減したことで知られるP&Gの調査によれば、オンライン広告の平均接触時間はわずか1.7秒だったということです。それと比較すると、当社の「12秒」という数字が驚異的であることがお分かりでしょう。
 この「12秒」という数字の背景には、当社の広告にはエンゲージ要素がふんだんに仕掛けられ、ユーザーの興味を喚起し、飽きさせないという工夫があります。国内の大手グローバルブランドの広告で検証を行ったところ、「対話性のあるインタラクティブ広告は通常の広告に比べて4倍の認知効果がある」ということがわかりました。つまり、本当に質が高く、ユーザーに好まれる広告は、ブランドにとっても大きな価値を生むということ。それを測るための指標のひとつが、「広告接触時間の長さ」なのです。

クリックや動画視聴率では見えてこない、動画広告の真の価値を

–「2018年11月、ハースト婦人画報社に制作ツールを開放」というニュースがありました。

 当社はクリエイティブ広告の制作支援も行っており、そのためのツールのひとつがTeads Studioです。Teads Studioとは、Teads が独自の技術をもとに開発した、リッチでインパクトの高いインタラクティブなクリエイティブを簡単に制作することができる広告クリエイティブ制作ツールのこと。このツールを2018年11月より、国内で初めてハースト婦人画報社様へご提供することになりました。これにより、最先端のクリエイティブ表現を活用した同社の広告商品開発を支援し、同社が保有するメディアの収益拡大に貢献します。
 これまでも、ハースト婦人画報社様は、インリードフォーマットの専売パートナーとしてTeadsを起用され、広告収益における主要プラットフォームとしてご活用いただいていました。こうした協業関係をさらに強化し、戦略的に発展させることを目的に今回、プラットフォームを開放。同社の広告商品開発を支援させていただくことになりました。現在もさまざまな企業様からTeads Studioに関するお問い合わせをいただいていますので、こうした広告商品開発支援はますます加速していく見込みです。

–今後、御社の目指すプロダクトの方向性については、どのようにお考えですか。

 現在、当社で進行中のプロダクトとして、「self-assembled ads」、つまり、「自動生成広告」があります。これは、基本の絵コンテは同じでも、リーチしているユーザーの属性や特徴によって、見せる内容を変えていく広告のこと。その人がどんな人か、どんな記事を見ているときに広告が表示されたのか、どんなシチュエーションで広告に接触しているのかなど、さまざまな点を考慮して、広告のクリエイティブをダイナミックに変化させます。まだ実験段階ですが、今後はエージェンシーと協業しながらさらに展開を進めていきたいと考えています。

–最後に、変化の激しいデジタル広告の業界で、今後、必要とされる人材についてはどのようにお考えですか。

 広告は、現実世界の中でユーザーが触れるものです。そのため、実世界に照らし合わせ、きちんと広告手段を考えることができる人材が必要とされるのではないでしょうか。たとえば、自分自身がある会社の広告を好ましいと思っていないのに、その広告をクライアントへ積極的に提案するなど、そうした行為は信頼を損ねます。当然のことですが、自分が日頃感じていることとクライアントへの広告提案があまりにも乖離していれば、ブランドセーフやアドフラウドを招くリスクは高まります。
 また、開放型のネットワークは危険性を伴っているということも、もっと意識する必要があると思います。それに対して、実践的な対策を取っているメディアやネットワークを選択することも必要ですし、単にエクセルの計算だけに依存してメディアバイイングを行わないことも大切。確かに広告コストは大事な指標ですが、その単価の前提となっている、形となって現れていない数字も把握しなければなりません。クリックや視聴完了率では見えてこない、動画広告の本質へ目を向けなければ、広告の真の価値を見定めることはできないのです。
 さらに、その広告がどういう形でユーザーへ配信されるのか。本当にビューアブルなのか、無理やり見せているのか、そうしたことも考慮にいれなければなりません。
 メディアプランニングを考える上で、考慮すべき事項はますます増えてくるでしょう。しかしこうしたことをすべて代理店任せにせず、今後、ブランドサイドも意識を高く持つ必要があるだろうと考えています。広告本来の目的に立ち返り、一体なんのために広告費を投下しているのか、そこに目を向け、広告の本質を見定める指標を確立する必要があるのではないでしょうか。

今村 幸彦氏
Teads Japan株式会社
Managing Director

1992年ソニー(株)入社。半導体・テクノロジー事業、フォーマットライセンスのビジネスに従事。シンガポールにて同社の事業拡大に参与し、帰国後Sony Computer Entertainmentにて、プレイステーションポータブル等事業の立ち上げに参画。2006年(株)電通入社。デジタル事業、海外ビジネス提携事業を旗揚げするなど要職を歴任。2014年Kenshoo, Ltd.(本社:イスラエル)入社。同社のアジア太平洋地域責任者としてAPACの事業戦略をリード。2016年8月、ビューアブル広告市場を世界的にリードするTeads.tvの日本法人Teads Japan(株)のマネージングダイレクターに就任。Teads Japanの日本市場における事業全般を統括。